社友のお便り

2023年07月25日 社友のお便り

トンガの可愛い人たち

白石 寿太郎 (1978年入社)

 今年の6月、初めてトンガ王国を訪ねました。「トンガって、どこだっけ?」と訊かれることも多いのですが、南半球の南回帰線の少し上、ニュージーランドの右上のポリネシア、いわば「南半球のハワイ」の場所に位置します。古くは1974年頃に6人のトンガ出身力士が朝日山部屋に入門、また近年はラグビーの日本代表チームに多くのトンガ出身選手がいることをご存知の方も多いかと思います。
 トンガ滞在はわずか4日間だけでしたが、目が合うと大人も子どもも微笑み掛けてくれるトンガの人々を、私はすっかり好きになりました。


トンガの首都ヌクアロファの目抜き通り

 トンガ王国は西暦950年頃に成立したと伝えられており、日本と同様に一度も外国の植民地になったことがない、太平洋諸国での唯一の国です。2015年7月の現国王(トゥポウ6世)の戴冠式には今上天皇ご夫妻が出席されるなど、トンガ王室と皇室との交流も盛んです。日本に150カ国超開設されている外国大使館が、トンガ王国にはわずか3カ国、そのひとつが2009年に大使館を開設した日本です(大使館ではありませんが、英・豪・ニュージーランドの高等弁務官事務所は開設されています)。
 無人島を含め170余の島々(日本は14,000余島)が南北約1000㎞(日本は約3000㎞)に広がっていますが、陸地面積の合計は720k㎡で奄美大島ほどの大きさしかないとのことです。私が滞在した首都ヌクアロファのあるトンガタブ島は東京23区の半分以下の広さにトンガ人口の4分の3に当たる7.5万人が住んでいる、文字通りトンガの中心です。

 でも、走っているクルマは日本の中古車ばかり、建物は最高でも5階建て、空港の周囲も夜は真っ暗、舗装道路は部分的で雨が降れば深いぬかるみと水たまり、国中にひとつも信号がない、住所に番地がなく郵便配達もポストもない、水道は整備が不十分で天水タンクの水を今も飲用している、国内市場が小さいので働き盛り世代の多くは海外に出稼ぎに出ているとか‥。
 決してモノやサービスに恵まれている国とは言えず、2022年1月の大津波で受けた被害に復興の手が付いていない島々もあるようですが、18世紀に訪れたキャプテンクックに「フレンドリー・アイランド」と命名されたように、人々はおおらかで温かく陽気でした。モノをひとり占めせず分かち合う精神が現在も生き続けているそうです。
 もっとも主食であるハイカロリーのイモ類に加え肉や近隣国からの加工食品も分かち合ってどんどん食べる習慣のため肥満が加速、大人は皆「ふとましく」なっています。10年前の資料だと男女ともに肥満率が8割と世界一だったとか。子どもたちはホッソリとしているのですが、どのタイミングで大きく成長するのかと思ってしまいます。
 トンガで出会った可愛い人々の写真をご紹介します。クルマの窓ごしに目が合ったりお店を覗いて目が合ったりするだけで、顔中で笑顔を投げてくれ、時にはポーズまでとってくれることも。こちらも嬉しくなって「マロ(ありがとう)!」と大きな声でご挨拶していました。今の日本が失ってしまった多くのものに再会できたようでとても懐かしい気持ちに浸ることができました。

写真をクリックすると大きな画像でご覧いただけます。


 とても素敵なトンガ訪問でしたが、帰路はトンガの空港からニュージーランド経由で帰宅するまで27時間、古稀を迎える身には少しシンドイものでした。
 でもいつかもう一度、訪れる機会があることを願っています。


(しらいし じゅたろう・1978年入社・東京都在住)


バックナンバー