丸紅での懐かしき方々との貴重な出会いと経験、数々の思い出を振り返りながら、私の辿った道の近況を書いてみましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
貴重な経験は綿花部からスタートして、メキシコ、ダラス(米国テキサス州)、国際業務部そしてインドネシアにつながっていきます。
海外に40年間を越えて滞在しますと(うちジャカルタ在住34年間)、何か少し見えてきたような気がしています。
それは・・・日本の、日本人の世界の中での姿のようなものです。いつの間にか、その「そうあるべき姿」を捜そうと思うようになっていました。
そのことも含めて、最近考えたり努力したりしていることを書いてみたいと思いますので、皆さんにもシェアしていただけましたら幸せです。
私がインドネシアの大企業グループ「シナルマス」に席を置いているうちに、「丸紅」とのジョイント・ベンチャーを始めとして、日本の大手企業との合弁プロジェクトが徐々に増加し、現在までに29件を数えるほどとなりました。
一方、両国間の経済協力にも自然に貢献できるようになり、同時に友好や親善のお手伝いもできるようになりました。
当地の日本国大使館の強いリーダーシップとご支援を得て、ジャカルタ日本商工会議所(JKT JAPAN CLUB)やJETRO、国際交流基金、そして当地に進出している多くの日本企業の方々がひとつのチームとして力強く連携した結果、非常に充実した友好・親善の行事を行うことができるようになったのです。
ちょうど10年前に「ジャカルタ日本祭り」が、両国友好のシンボル的なイベントとしてスタートしました。そこでは、両国の市民同士が、音楽祭やポップカルチャー、アニメや日本のスナックなどを楽しみながら、親しく交流しています。
その実行委員長を拝命して以来、当時のジャカルタ州知事で、現在のインドネシア大統領、ジョコ・ウィドドさんにご出席いただくなど、本格的に友好の輪が広がっていくにつれて、両国にとって本当に心の通う友好の姿とはどんなものかということについて、益々深く考えるようになっていきました。
① 日本の文化を一方的に押しつけるような紹介とならないこと
② あらゆる場面・局面で、いつも相手に対する心からの敬意と誠意があること
③ 本当に望んでいることは、なかなか言葉となって出て来づらいので、
相手の気持ちをそっと悟ってサポートに努めること
④ 特に相手の国の人達がずっと大切にしてきたこと、例えば、伝統、言い伝え、宗教などを、
我々日本人も同じように大切に思ってあげること
このようなことがとても大切であると思うようになって来たのです。
両国間の友好や親善について、当地の仲間と一緒に考えたり、意見交換をしたりしながら、その輪を大きく広げる地道な努力を続けていたところ、一昨年(2017年)突然に、信じられないご連絡を日本国大使館からいただきました。岸田文雄外務大臣(当時)名で私を表彰するというご連絡です。耳を疑うというのはこのことで、瞬間、目の前が急にパッとまぶしくなり、広い野原にポツンと立っているように感じたことを覚えています。
石井正文駐インドネシア日本国大使より実際に表彰状をお渡しいただいた際には、とても光栄なことと感激すると同時に、何か大きな責任のようなものを感じました。これからも日本とインドネシア両国のために、表彰に相応しい活動を続けていく必要があるという責任の重さです。
その日は結構早く来ます。
インドネシアは、2億6千万人の人口を背景として、2030年には国内総生産(GDP)が世界第7位になると予想されています。さらに2050年には、中間層の急激な拡大、経済発展によってGDPが世界第4位となり、日本を抜く可能性が高いと予想されています。インドネシアはいつか自分で良い車を作れるようになるでしょう。エアコンもオートバイも自国で生産出来るようになります。
そのような時が来ても…、「やはり日本とずっと一緒に組んでいくのが一番なのだ…」と思っていただきたいのです。
その為には…?
いつまでも日本と心からの友人の国として前へ進んでいってもらう為には…今からこの答えを、インドネシアの友人と一緒に考えています。
一言で表わすとすれば、「Equal Partner」としての関係をしっかり構築することであると思うようになりました。
相手国の人達に心からの敬意を払う時、それが相手にも必ず通じて、誠意を持った、思いやりのある友達同士になれます。
これが本来の日本の文化であり、それをインドネシアで再発見したのです。
真の友人同士になれば、未だ声になっていない、お互いの本当の望みが聞こえるようになります。その先はもっと楽しみで、次にはお互いの「価値観」を近づけることができるようになるでしょう。
両国が仲良くなることだけが最終目的ではなくて、仲良し同士であれば、ひとつのチームとして、アジアや世界で役に立つ仕事をして行けるようになります。価値観を擦り合わせながら、未来に役に立つチーム同士へ…。それが次の目標です。
今からそれを考えても決して早過ぎるということはなさそうです。明日からまた、当地での活動を通じて得られた沢山の仲間や友人たちと、ひとつひとつ考えながら、「あるべき姿」の答えを探していきたいと思っています。
ここまで私が歩いて来られたことについて、多くのサポートを頂いた「丸紅」の諸先輩や友人たちに心から感謝しつつ、一旦筆を置きたいと思います。
(こばやし かずのり・1965年入社・インドネシア国ジャカルタ市在住)