特別企画

2015年12月01日 特別企画

プロ野球「セ・パ交流戦」についての考察

市村 雅博 (1972年)

筆者近影

 2015年のプロ野球日本シリーズでは、ソフトバンクがヤクルトを圧倒、見事日本一の栄冠を獲得した。5月下旬から6月半ばに掛けて実施されたセ・パ交流戦でも、ソフトバンクが圧倒的な強さを見せた。ソフトバンク以外のパ・リーグ所属チームも順調に勝ちを重ね、終わってみれば、パ・リーグ側の64勝47敗3分け、何と貯金17という結果であった。過去の交流戦の結果を見ても、パ・リーグ優勢の年が多く、以前から言われている、「人気のセ・リーグ、実力のパ・リーグ」が、改めて印象づけられた年となった。ただ、今年の交流戦、勝敗の中身を見てみる限り、トップのソフトバンクが貯金6、最下位のDeNAが借金11という結果となっており、両チームを除いた、10チームで比較すると、セ・リーグとパ・リーグは、ほとんど互角であったと言って良い。いくら何でも、DeNAが負け過ぎだったということである。

 それにしても、交流戦においてパ・リーグ優勢の年が多いひとつの要因として、パ・リーグ主催ゲームにおける、指名打者(DH)制の採用が考えられるのではないだろうか?パ・リーグではペナントレースもDH制で戦っているわけだから、DH制について、セ・リーグのチームと比べて一日の長があることは間違いない。一方で、交流戦の半分は、DH制を採用せずにゲームを行っているわけだが、その場合のセ・リーグ・チームのアドバンテージは、逆のケースのパ・リーグ・チームのアドバンテージと比べて遥かに小さいように思われるのである。それは、DH制独特のチーム編成に起因するものであり、DH制の下では代打の使い方や試合運びにも大きな違いがあるために、その巧拙が試合の結果に影響しているのではないかと考えられる。これについては、交流戦10年間の各ゲームの内容と結果をもう少し詳しく分析してみる必要があるかも知れない。


1988年完成間もない東京ドーム 巨人の相手は大洋ホエールズ

 次のポイント。現行、交流戦の勝敗をそのまま通常のペナントレースの成績に反映させているが、これは如何なものだろうか?はっきり言って、交流戦の勝敗を公式戦の成績に反映させることには反対である。同一リーグ内での勝負であれば、勝敗の結果は、当然のことながら、直接的にゲーム差に反映するが、交流戦の結果が含まれる場合には、そうとはならない。そのため、2015年のセ・リーグで見られたように、一時的にせよ、全チームが借金生活となってしまったり、交流戦で惨敗したDeNAがかなりの長期に亘って、リーグ2位の位置を確保していたりという、歪んだ形のペナントレースを生じさせる結果となる。セ・リーグの混戦状態を、「史上まれに見る大接戦!」と囃したてたマスコミも多かったが、交流戦の結果が、その大きな要因であったわけで、ある意味では正に白けた現象であった。交流戦は、日頃対戦のないチーム同士、或いは打者と投手の闘いを楽しむことが出来る貴重な機会であり、その実施そのものを否定するつもりは毛頭ない。ただ、その結果をそれぞれのペナントレースに反映させるのではなく、他リーグ・チームとの総当たり戦の、独立したイベントとして実施し、交流戦のみの成績でチーム表彰をすることが望ましいのではないかと思われる。

 今年の交流戦は、従来の24試合から18試合に削減されて開催されたが、これは、同一カードのゲームを3試合のみ、いずれかのチームのホームグラウンドで開催し、相手方の球場で行う残りの3試合は来年実施するという、魔訶不可思議なルールとなった結果である。本来、交流戦は、それがスタートした2005年当時の開催ルール、すなわち、同一カードのゲームを、ホーム・アンド・アウェーでそれぞれ3試合ずつ、合計36試合で実施することが望ましいものと考える。梅雨時に実施されることもあり、各試合の日程調整が難しくなって、その後の公式戦日程にも影響が出かねないとか、テレビ放映権料収入の問題(セ・リーグ側球団の抵抗が大きいと聞く)とか、交流戦の試合数を増やすことについては、いろいろ難しい問題もあるようだが、少なくとも、2015年・16年のように、2年掛けて優勝チームを決めるようなナンセンスな演出は止めにして欲しいものである。


(いちむら まさひろ・1972年入社・千葉県柏市在住)


バックナンバー