特別企画

2015年12月01日 特別企画

男子、厨房に入るべし!

西沢 和彦 (1966年)

 「人間は生きてゆく為には、食べなければならない。食欲が最も強い欲望としてあるのは生命維持のために不可欠であるからだ。」と、偉そうに言っているのは、自分が食いしん坊であることの言い訳だと思います。

 仕事をしている間は、この食欲も単に生命を維持し、活動のエネルギーを得るための機械的な作業でしかなかったように思えます。

 しかし、退職後、時間が十分できると、本来の生命維持という目的以外に、食を楽しむという目的が加わりました。それに時間が十分あると、単に旨いものを探し、食べに行くだけではなく、自分で作りたいという欲望が目覚めます。


ひき肉を使わず牛肉を包丁でたたいてミンチにして作る本格的なハンバーグ

 私も皆様と同様、「男子、厨房に入らず」と教えられてきました。この呪縛から逃れたのは生活パターンの変更に伴う必然があったからです。

 退職後毎朝5時ごろ目が覚め、家族が起きてくるまでの2時間をどう過ごすかが大きな課題となりました。初めは、新聞を読んだり、本を読んだりしていました。隠遁生活に入ると世の中の動きに疎くなるとともに興味も薄れ、新聞、雑誌では何時間も費やす価値がない事に気づきました。それと同時に1時間もすると無性に腹が空いてたまらなくなりました。何か口に入れるものがないかと冷蔵庫を開けたところ、何と冷蔵庫には、使い残した食材が詰まっていたのです。そこで、思いついたのが「サルベージ朝食」。使い残しの野菜や、ハム,ソーセージ、長い間冷凍庫にある干物など、そこにある物で、一汁三菜朝飯を作り始めました。サルベージが基本ですので、みそ汁の具は何が出てくるかお楽しみ。

 そのうちスポーツクラブでウォーキングしながら、テレビの料理番組を見るようになりました。今、テレビを点けると必ずどこかでやっているのが、病気と料理の番組。それを歩きながら見るのですが、食べたいと思った料理を帰って早々に再現。再現と言ってもメモを取っているわけでもないし、イメージに残っているところをつなぎ合わせるだけ。調味料の種類、配合分量は至っていい加減です。それでも、基本的には塩、コショウ、しょうゆ、みりん、砂糖などに限られますので、これらを適当に調合します。時には想像もしていなかったものに出来上がることもありますが、これがなかなか家族に好評。

 このようにだんだんエスカレートし、これという料理に巡り合ったとき、帰りに材料も買って帰ると、「目利きがいい」、と家族に褒められ、ますます有頂天。


完成!

料理をやってみると、「これは仕事とよく似ている」と思うようになりました。

1.まず顧客(家族)のニーズを察知すること。(マーケットリサーチ)
2.二―ズに応え、どのようにプレゼンするか。(顧客の承諾)
3.生産計画
4.材料調達(在庫と新規購入)とコスト計算
5.生産 生産手順の検討。ジャストタイムの納期管理
6.商品のディスプレイ(色取り 盛り付け)

 などなど、今までやってきた仕事と一脈通じるものがあります。
暇になり淋しさを感じている方、是非「厨房に入るべし!」 「食を楽しむ」
これぞ男の料理!


(にしざわ かずひこ・1966年入社・東京都練馬区在住)


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