新春企画

2023年01月01日 新春企画

ロンドンにて

津田 愼悟 (1975年入社)

 2012年の英国は4月のロイヤルウェディングに始まり7月末からのロンドンオリンピックと国民規模のイベントがめじろ押しでした。

 その間にエリザベス女王のダイヤモンドジュビリー(在位60周年記念式典)があり、行事の一環として5月18日には女王夫妻主催の午餐会が郊外のウィンザー城で催され、20カ国以上の君主や王族が招待されました。
 天皇陛下(現上皇陛下)はその3カ月前に心臓のバイパス手術を受けられたばかりでしたが、直にお祝いを述べたいという気持ちは強く、英国訪問の運びとなりました。
 相前後して大使館より「両陛下から皆さんにお会いしたいということでお時間をいただいたのでお集まりください。」との案内状が届きました。
 公式行事は恙無く終わり、当日となりました。
 前日からの雨も上がり中庭には木漏れ日が注ぎ、両陛下を前にして青々とした芝生が広がっています。そこに各界の代表者約100名が、緊張した面持ちで佇んでいます。
 陛下からのお言葉の後、大使館より「両陛下から、直接ご挨拶をお受けしたいということで1時間いただきました。お話しされたいのは山々でしょうが、限られた時間ですので皆さんからは公職とお名前だけお伝えください。それでは4列にお並びください。」と。
 高齢者の方、医療や教育関係の方々が優先的に先導され我々は後方に位置しました。列は途中から二手に分かれ左側が天皇陛下、我々は右側の皇后陛下へと向かいます。しかしながら予想された通り、貴重な機会ということもあり列は遅々として進みません。
 打ち切りも覚悟していたところ、付き添われていた大使夫人のご尽力もありギリギリでご尊顔を拝することができました。
 「日本クラブ副会長を務めております丸紅欧州支配人の津田です。」と述べ、お待ちの方も多いところ、即辞そうとしました。すると、「まあ、丸紅さん、懐かしいわ。若いころ、こちらに参りました時、大学や名所旧跡などいろいろご案内いただきましたのよ。」
 思わず「えっ!」と声が出そうになりました。お言葉が返ってくることは勿論、弊社の名前が出てくるとは予想だにしないことです。
 「貴重なお時間を賜りありがとうございます。皇后さまもお元気そうで何よりでございます。」とお返しするのが精一杯でした。

 三々五々、しばらくして、熱いものが込み上げ涙が出そうになりました。

 6回目の年男に際し、頭の中が真っ白になった瞬間をご報告致しました。


(つだ しんご・1975年入社・東京都在住)


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