新春企画

2022年01月01日 新春企画

丸紅卒業後の人生を振り返って、

紿田 英哉 (1961年入社)

英国大使のSir.Stephen Gomersall KCMG ご夫妻と

 丸紅を辞めて20年になる。在職40年。業務畑が長く二度のロンドン駐在で10年近くを海外で過ごし訪れた国は100カ国近くになる。この経験が人生の視野を大きく広げてくれたと思う。
 丸紅を辞めた2001年末、日英間の経済・文化面での交流に貢献したとして、英国のエリザベス二世女王から名誉大英勲章CBE(Honorary Commander of the Most Excellent Order of the British Empire)の叙勲に浴した。日本人として第二次大戦後36人目という大変に名誉なことであった。
 2002年から、国際交流基金の理事日米センター所長を6年近く、これは日本外交にとって最重要な日米間の知的交流を促進する活動で、このおかげで素晴らしいアメリカの友人に恵まれた。ハーバード大学の故エズラ・ボーゲル教授らのほかコロンビア大学のジェラルド・カーティス教授とは今日に至るまで親しい親交が続いている。

 2004年からは秋田の国際教養大学の設立に関わり現在まで理事を務めている。途中5年ほどは特任教授としてリーダーシップ論、ヨーロッパの政治経済論のゼミも受け持った。少人数で全寮制、授業はすべて英語で全員一年の海外大学留学を義務付けており優秀な学生が全国から集まっている。卒業生が丸紅はじめ一流企業で活躍しているのは嬉しい限りだ。
 2008年からは森ビルの故森稔社長に頼まれて会員制クラブ、アークヒルズクラブの専務理事をしている。日本を代表する経済界学界文化人がメンバーでクラブのさまざまなイベントを通じての交流が続いている。このクラブで次代を担う若手経営者や文化人との異業種交流会をハーバード大学の竹内弘高先生にadvisorをお願いして進めていたがコロナで中断しているのは大変残念だ。ぜひ再開したい。
 また日米センター時代からのご縁で、アメリカ研究振興会や経産省関係の国際経済交流財団の理事も務めてきた。
 音楽の関係では子供のころからヴァイオリンをやっていたおかげで、スズキ・メソッド(才能教育研究会)の理事も長く務めた。今やこのメソッドは世界中に広がり2013年に実行委員長として、松本で世界大会を開催。世界中から5000人も参加したのも忘れがたい思い出だ。
 こうしたご縁で小沢征爾さん率いる松本のサイトウ・キネン財団の理事や音楽大学の桐朋学園の理事も長く務めた。
 St.Petersburg Symphony Orchestra の音楽監督で世界的な大指揮者Maestro Yuri Temirkanov との交友も20年近くになる。彼の手にかかると魔法にかかったようにオーケストラの音が変わってしまうといわれるほどの名指揮者だ。もともとはアメリカの友人の紹介で知り合ったのだが日本が大好きで、演奏旅行で日本に来るたびにわが家に食事に来るようになった。
 1か月違いの同い年。70歳と75歳の誕生日にはロシアに招かれた。毎回Putin大統領もモスクワからお祝いに駆けつけてきていた。この写真はその時のものだ。


Maestro Yuri Temirkanovの誕生日に招かれて

 ピアノを弾かれる皇后さま(現在の上皇后さま)をお迎えしてここ20年近く各国大使公邸で開いてきた室内楽の集いMusical workshopをcoordinateできたのも忘れがたい経験だ。
 内外の一流の演奏家たち、アンネゾフィームッターはじめ内田光子さんや小沢征爾さん、堤剛さん、小山実稚恵さん、大谷康子さん、宮田大さん、渡辺貞夫さんらが参加し、ご一緒に音楽を通じてのすばらしい交流の場となってきた。キャロライン・ケネディ大使も2度ホストをされたが、帰任の前日の晩にこのワークショップが開催できたことは彼女にとっても生涯の忘れがたい思い出となったと思う。
 この他ビジネスの関係では丸紅時代からのご縁でFinlandのグラスメーカーiittala の顧問やDenmarkの世界的な靴メーカー・ECCO のECCO Japanの会長も務めた。
 こうして振り返ってみると本当に長い人生、大勢の方々のおかげでさまざまな素晴らしい経験をさせてもらったと思う。これができたのも二人の子供にも恵まれ何といっても54年にわたって支えてくれたパートナー道子のおかげだとつくづく思う今日この頃である。幸運な人生であった。感謝の一語に尽きる。ありがとう!

(たいだ ひでや・1961年入社・東京都在住)


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