新春企画

2020年01月01日 新春企画

丸紅での思い出とこれからのこと

杉浦 勉 (1971年入社)

2019年10月18日 
駐仏オーストラリア大使公邸のテラスにて

 37年間丸紅に在籍しましたので思い出は沢山あります。その中でもやはり入社間もない頃のことが今でも印象深く残っています。
 1976年のことです。フィリピンのマニラでIMF・世銀総会が開催されました。フィリピンで開催される初めての同総会を記念して西欧名画展を開催したいので丸紅所蔵の絵画を貸してほしい、という要請が当時の駐日フィリピン大使から丸紅の役員にありました。早速50点強の作品を選定し、特別機でマニラに空輸することになったのですが、クーリエとして一人マニラに行く必要がありました。
 当時、私は丸紅子会社のパレスアート株式会社に出向していました。本来同社の上司が行くはずでしたが、上司のパスポートの期限が切れそうなことが判明、急遽私が代理で出張することになりました。
 戒厳令下のマニラ空港に到着し、トラックに積み替えられた絵は前後をフィリピン警察やマラカニアンの兵士の長い隊列に護衛されて会場まで運ばれました。その夜、展示品は木箱のまま会場に保管し、翌日一点一点点検しながら飾り付けを行いました。その間、展覧会開会式典でマラカニアンの楽隊が演奏する「君が代」の曲のテンポの良し悪しを聞いてほしいと頼まれたりもしました。

 開会式当日、会場に来られたマルコス大統領ご夫妻に随行して絵の説明をすることになりました。メディアの取材も沢山受けました。当初予期していなかったことが次々に起こり、緊張しながらも非常に稀有な経験をさせて頂きました。会場を後にするとき、マルコス大統領ご夫妻にお礼のことばを頂き、漸くほっとしたことを思い出します。

 さて、これからやろうとしていることですが、三つのことが気になっています。私は現在パリ日本文化会館に勤めています。同館も大きく関与して2018年から2019年にかけて日仏友好160周年を記念した「ジャポニスム2018 」という一大日本文化紹介事業をフランスで実施しました。その期間に醸成されたフランス人の日本への関心や憧れを未来につなげるべく、新しく策定した同館の「中期ビジョン」を達成する道筋をつけることが一つ、日本に帰国した際にはまた丸紅の美術品コレクションに接してみたいということが二つ、そして日本で色々な桜の花を見たいということが三つめです。

(すぎうら   つとむ・1971年入社・パリ在住


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