新春企画

2017年01月01日 新春企画

家庭菜園の楽しみ

大村 和夫 (1964年入社)

 今年は酉年、6回目の年男となりました。讃岐で農家の次男として生まれた私は、いつの日か緑の野菜に囲まれて、思いっきり農作業をしてみたいと思い続けていました。そして退職後の早い時点でその願いが叶い、今ではすっかり「農夫」を楽しんでいる、そんな私の近況を綴ってみました。


筆者近影
(たわわに実る自宅柚子の木の前で)

野菜作り

 現在、船橋市のアンデルセン公園の近く(我が家から5km)の竹林に囲まれた静かな場所に農地を借りて、家内と二人で年間約60種類の野菜作りに励んでいます。同じ菜園の仲間は、現在40人程で、年初に各自が必要な広さを地主さんに申し込める仕組みになっているので、我が家では50坪を借りて、そこに20本の畝を作っています。

 この地主さんは「食の安全」に厳しく、過去30年間、無農薬・無消毒・無化学肥料での栽培方針を貫いており、従って、我々もこれを守る必要が有ります。そんな訳で寒冷紗などを使用して防虫に努めるのですが、やはり手作業での駆除が中心となりますし、生育の盛んな夏場の雑草引き抜きなども大変な作業となります。でも、そんな中、早朝には散歩中のキジの夫婦やタヌキの親子?に出くわしたりして、心が豊かになる一幕もあります。

 毎年1月は、過去の栽培配置図を取り出して、家内と一緒に、ナス科の野菜が過去2-3年の間、同じ場所に重ならないように注意しながら、何をいつ頃、何処に植えるか考える時期です。その段階では夏の炎天下での害虫駆除などのことも忘れ、もう二人の頭の中には、たわわに実ったナス、トマト、真っ白な白菜、カリフラワー、カブ、キャベツ、レタス、ホウレン草、その他各種の葉物、イチゴ、ズッキーニ、モロコシ、枝豆などが次々と浮かんで来る、1年で一番楽しいひと時です。

仲間達との交流

 菜園の仲間達とは農作業以外にもいろんな催しを行っています。春には、竹林の中でBBQ大会、インドネシアの「ガムラン」の踊りや津軽三味線の演奏会、船橋市民バンドによるジャズ演奏会。そして秋には、外部の方たちにも参加して貰って、山形県出身のメンバーの指導により、本場の「芋煮会」を賑やかに行っています。年末には、自分たちで収穫した大豆で豆腐を作り、餅つきやしめ縄作りと続き、寒の間には、味噌も仕込みます。

 商社、銀行、メーカー、旅行会社、地図会社、役所等の現役勤務者・退職者が入り混じった菜園仲間が、みんなで畑の隅に建てた東屋に時おり集まって、共同作業や世間話に興じます。そんな中で、今まで関わりの少なかった他の世界がいろいろ垣間見られるのも有意義なことです。地主さんは、元々、農業従事者が減っていくことに危機感を感じて、農業指導を含む家庭菜園を始めたこともあり、仲間の数人は既に農業人として独立していきました。でも、我々夫婦は、菜園の横にある、別グループが運営するハーブ畑にも時々立ち寄って、ラベンダー、ミントなどを摘み取らせて貰っては、ハーブティーを飲みながら、農作業をのんびり楽しむ道を歩んでいます。

お役に立ちたい

 2011年の東日本大震災以降、毎年春にはネギ、夏にはスイカ、メロン、そして秋にはサツマイモ(昨年は300kg)を南三陸町の仮設住宅の方々へ届けており、年々、顔見知りも増えて来ました。また、地主さんの縁で、現地の漁労長さんとの繋がりも生まれ、今では、ワカメ、ホタテ、牡蠣などの水産物を現地から購入し、我が菜園横で地主さんが開いている産直野菜の店で扱って貰ったりして、少しでも復興のお役に立てればと菜園仲間ともども張り切っています。

 最近では、高騰している店頭での野菜の値段を尻目に、我が家は家庭菜園のお陰で、このお正月も、手塩に掛けた里芋、サツマイモ(きんとん)、黒豆、小松菜、青梗(チンゲン)菜、春菊、ネギ、水菜、大根 などが食卓を賑わせてくれました。

 今年も正月休みが明けて暫くすると、畝立て作業を皮切りに栽培の配置を考えながら、1年で最も楽しい種蒔きの季節を迎えます。

 最後になりましたが、社友会の皆さまにとりまして、本年がさらにより良き年となりますようお祈り申し上げます

(おおむら かずお・1964年入社・千葉県船橋市在住)


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