新春企画

2018年01月01日 新春企画

世相雑感

清水 宏員 (1957年入社)

筆者近影

 地球上に生命体が誕生したのは39億5千年前という。そして、今に至るまでに5回の大量絶滅の危機があったらしい。5回目の危機は66百万年前で、直径10キロの天体がメキシコ・ユカタン半島付近に衝突したのを契機に、その頃地球を支配していた恐竜が絶滅し、75%の生命体が死滅した出来事である。それでも、恐竜はそれまで1億7千万年の長きに亘って地球を支配していたようである。より大きく、より強く、より美しくと、恐竜達は自己の種を残すために努力を重ね、体長35メートル・体重70トンに達するものまで居たという。しかし、大きく、強くなるということは、大量の食物を必要とするということである。天体が衝突した地球の大混乱の中で、さしもの恐竜たちも飢えて滅んでいったのではないか。


 人類が地球を支配するようになってからの歴史は、恐竜に比べると極めて短い。然し1万年ほど前の農業の発展以来、進歩のスピードは早まり、近世の産業革命以降の科学―利便性の発達は、地球狭しとばかり、今日の人口72億の一大種へと成長させた。その一方で、早くも人類と家畜以外の生命体には減少するものが多くなり、絶滅危惧種も多くなりつつある。利便性が齎すものはプラスばかりではない。文字の発明すら、ギリシャの哲学者は、同時に記憶力の衰退を齎したと喝破した。電話の発明も、便利ではあっても、フェイスつうフェイスの情感の伝わり方は少し削られた。最近のスマホやSNSブームを観ていると、感性が急速に劣化しつつあるような不安を感じる。<以心伝心>の文化は過去のものになりつつあるようである。マスコミ・ソーシャルメディアの発達も、衆愚民主主義時代を齎した一因ではないか。


 20世紀には人類は限りなく発展し、未来は常に輝かしいと思っていた人が殆どだったと思う。然し21世紀の今日、直面するのは、産業革命以降の地球汚染、後始末のできない核の危うさ、温暖化と地殻変動の進む地球。そして、極め付きは人工知能の発展であろう。殆どの分野で先ず人類を補完し、やがて代替し、さらには知能も行動力も凌駕していくであろう。そしていつの日か、AIを支配できる一部の人類は別として、大多数の人類は、<猿の惑星>のように人工知能の能力に及ばない時代が来ることが容易に想像できる。人類の歴史が簡単に終わるとは思えないが、いくつもの紆余曲折はあるだろう。


 アラビアンナイトのイスラム繁栄の頃から、西欧の大航海時代を経て19世紀には大英帝国が君臨し、20世紀には米国が世界の保安官と自他ともに認める時代となった。しかし21世紀、オバマ氏は米国をその地位からステップダウンさせ、トランプ氏はアメリカファーストを唱え、人類の未来や、人類が近世以来夢見てきた知性・品性・人間性の向上志向などにはあまり興味がなさそうである。


 21世紀は中国の世紀となるのか。然し内外の政治・経済の難問が容易に解決できるとも思えない。難しそうである。そこへ金正恩氏の登場である。我々世代は太平洋戦争突入前夜の日本との類似に、なんとか衝突を避けて欲しいと感じざるを得ないのだが、現代の2大政治家と目されるメルケルさんとプーチン氏の二人に組んで頂き(二人ともにその意欲はお持ちのようである)現実的な解決策を仲介して貰うようにできないものか。


清水 宏員  (しみず ひろかず・1957年入社・東京都東久留米市在住)


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