新春企画

2013年01月01日 新春企画

7回目の年男

篠田 昭太郎 (1949年入社)

国立小劇場舞台にて

 平成25年癸巳、7回目の年男を迎えることになる。まさに、戦中戦後を経験した昭和一桁世代である。

“松竹に東風ふきさそう年德や、鳥居くぐれば
駒下駄の音もよいやと初詣り”

 これは初春の景を詠じた小唄「松竹に」の一節である。初詣りの下駄の音も今は昔。吹く風も、右肩上がりの嘗ての好景気を経験した者にはどこか勢いがない。
 しかし、今年はどうやら東風が頬をなでてゆきそうな気配を感じる。
 まさに年德ではなかろうか。
 小唄を始めてかれこれ30年になろうとしている。名取とは名ばかりで(名取名:春日 豊高壽昭)、師匠から多々注意を受けながらの稽古を未だに懲りずに続けている。


 なぜ続けてこられたのだろうか。まず週1回のお稽古に通うことで生活のリズムが整う。
正座をして、お腹からしっかり声を出すことで必然的に背筋がピンと伸びる。稽古仲間との交流は人間関係の輪を広げる。
 また、ほぼ隔年ごとの舞台での発表という目標のために猛練習が課せられる。人様の前での失敗は許されぬということで、師匠の指導にも一段と力が入る。舞台に立ったときの緊張感と、無事終えての達成感。これも堪らない魅力のひとつである。
 今年の「お弾き初め」に向けて、気持も新たに練習に励む日々である。


神近き大提灯や初詣 虚子


(しのだ しょうたろう・1949年入社・東京杉並区在住)


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