社友のお便り

2015年08月01日 社友のお便り

連続性の不思議

濱地 国光 (1961年入社)

 昔の人は知っていました「二度ある事は三度ある」と。
車で大通りに出ると左右どちらに行ってもある程度青信号の続く事があります。当然逆もあります。電車やバスを乗り継いで目的地に行く時、乗り継ぎが上手くいってスムースに目的地に到着する事もあれば、その逆もあります。コインを投げ、表裏の出る確率は2分の1ですから、確率計算通りなら表と裏が交互に出るはずですが、現実にはどちらかがある程度連続して出ます。朝、家を出る前に嫌な事があると、何となくその日は良くない事が続くものです。航空機事故の連続、地震や火山噴火の連続なども、経験的にある程度見られる事象です。また、財布から紙幣を取り出し紙幣の番号を見てみると、不思議な数字が並んでいる場合のある事に気づきます。宝くじの当選番号やレースなど、その日の並びも一見ランダムな並びに見えますが、興味をもって見直して見ると、不思議な数字の並びに気のつく事があります。

 このように様々な連続性に遭遇すると、我々三次元の世界では「偶然だよ」、「ラッキー」、「ついてる、ついてない」で片付けています。また、ゲンを担ぐことや、ジンクス、易を含む占いなども、統計学とともにこの連続性を利用している事があるようです。 我々三次元の世界では、整数「1、2、3から始まる自然数と0の総称」から展開される順序は理解出来ますが、ランダムな並びには対応する事が出来ません。

 話は少し変わりますが、JR立川駅では、道路からひとつ上がった所にコンコースが在ります。道路レベルからエレベーターに乗って、2Fのボタンを押すとコンコースに出るのですが、そこにはLビル、Iビル、Gビルと、3つの商業ビルが改札口を挟んで造られています。ところが、その3つのビルの階数表示が統一されていないというのが、混乱の始まりです。Lビル、Iビルではそこが2階と表示されていますが、Gビルだけは1階と表示されています。しかも、Gビルでは、この1階の下に、2階、さらにその下に1階という表示があるのです。その理由を聞いたところ、下2つは、オーナーの異なる(?)Sビルになるからなのだそうです。それにしても、同じGビルのエレベーターにこのような表示が有り、整数順列からみれば、いくら何でも1階からひとつ下がって2階になる順列はどうにも理解出来るものではありません。これに加え、Gビル1階から下向きのエレベーターに乗って、Sビルの1階から外に出ると、すぐ横には、さっき乗ったばかりの道路に面したエレベーターの入口があるのですから、頭の中は???でいっぱいです。大体日本のビルは、一段下がって地下1階だけは整数順序で正しいのですが、一段上がるといきなり2階になります。立川駅のコンコースはことほどさように、この面ではもうむちゃくちゃです。整数の世界でも、これが整然と並んでいない不連続性があるという実例であり、あたかも四次元の世界に踏み込んだような錯覚をしてしまう事もあります。オリンピックも控え、先進国と言っている割には、こんな身近にも数字の不条理が存在するのです。


 話を本題に戻しますが、一見ランダムに見えるこれらの並びであっても、もうひとつの世界では一定の法則があると理解されています。その法則のことを、専門用語では、「エントロピーの法則(熱力学で対象とする順列内の状態を表す法則であり、統計力学においても無秩序の尺度として活用されている)」と呼びますが、要するに、その世界では、我々三次元の整数と同じように、時間とともに変化はするものの、整然と順序よく並んでいる数字があると言われています。ただ、先に述べた誰もが経験しているいろいろな連続性から、そこには何らかの法則があると言う事が我々にも容易に推測できます(これを別次元の整数と呼んでも良いかも知れません)。では三次元ではこの法則は全く理解不能で、利用できないものなのでしょうか?

 マサチューセッツ工科大学のエドワード・ソープ博士は確率論の権威でしたが、自らの能力を試す為、ブラックジャックで確実に勝てる方法に関する論文を発表し、実際にこれを武器にラスベガスに乗り込んで大勝利を修めました。対抗手段として、カジノ側がブラックジャックのルールを変えると、今度は、ルーレットに注目してこれに挑戦しました。一軒のカジノを標的にして、その中の一台のルーレット台に的を絞り納得するまでこの一台に張り付き、何日間も賭ける事なく、メモを取り続け、おそらく気温や湿気や時間帯と連続性などあらゆる計算を行い、全ての条件が一致したところで大金を投じて勝負に出ました。博士はこれらの勝負に一度も負けること無く勝ち進み、ラスベガスカジノ協会から出入り禁止となり、仕方なくモンテカルロなど世界中のカジノを回りましたが、どこのカジノからも出入り禁止が言い渡されたそうです。

このように我々三次元の世界でも、別次元の整数について全く理解不可能という事ではないと思われます。ここまでお話してきた事は決して、賭博の奨めではありません。今日1日、近い将来、そして人生においても、この様に連続性の不思議に驚かされるばかりでなく、逆に何が連続するのかを考え、訓練して行動することによって、危険を避けながら、「良し!」と出した結論ならば、これに従い生活して行くこともひとつの生き方ではないかと思います。「今日はこれが連続するぞ!」と考えて、それがその通りになった時の快感を味わってみるのも面白いかも知れません。


(はまじ くにみつ・1961年入社・東京都東村山市在住)


バックナンバー