趣味のコーナー

2018年09月20日 趣味のコーナー

バラだけではない「薔薇の庭」を訪ねて

上松恭一

バラだけではない「薔薇の庭」を訪ねて

 本稿は、本年(2018年)5月、社友・上松恭一さん(1964年入社)と奥様の瑛さまのご厚意に甘えて、川崎市内の上松邸にお邪魔し、ご夫妻ご丹精のバラを中心とした樹木や草花いっぱいのお庭を拝見し、お話を伺った時の記録です。上松さんには、2015年、当ホームページにロシアの大指揮者ワレリー・ゲルギエフとの親交についての興味深い記事をご寄稿いただきましたので、ご記憶の方も多いと思います。

 


庭への入口をなすパーゴラ(上松氏撮影)

 編集委員2名(1名はカメラマン兼任)と事務局員2名からなる「取材チーム」が、爽やかな初夏の午後、上松ご夫妻に温かく迎えられ、玄関に上がると正面に大きな一枚ガラスのはめ込み窓が見え、それを透して庭への入口をなすパーゴラ(*註)とそれに絡むピンクのバラがいきなり目に飛び込んできます。居間に通されて庭を見渡し、さらに先ほどのパーゴラをくぐって庭を案内していただきました。 (*註:軒先・庭などでバラ・藤などを絡ませて作る格子状の日陰棚のこと)


白石編集委員撮影

 「今年は、春以降気温の高い日が多かったせいでバラの開花も早く、例年なら今日(5月15日)あたりが満開で最も見ごろなのに、盛りを過ぎてしまっているのがとても残念です。」とご夫妻は口を揃えられるのですが、素人目には、色とりどりのバラが庭の至る所に咲き誇っていて十分に美しく、取材チームメンバーは、「これで盛りを過ぎているなら、本当の盛りで満開のときに拝見したら、どれほど豪華絢爛の絵巻が展開されるのか、想像もつかないね。」と言い合ったことでした。

 バラだけでなく、沢山の草花が植えられバラと合わせて楽しめるように配置されています(バラと一緒に楽しめる植物を「コンパニオン・プランツ」というのだそうです)。また、秋には紅葉が楽しめるシラキをはじめとする樹木も多く植えられ、バラの季節が終わっても、多種多彩の草木が楽しめるようにアレンジされています。 植物だけではありません。シジュウカラ用の巣箱や石造りのバード・バス(鳥のお風呂ですね)も配されており、小鳥たちも庭の魅力を増す一役を担っていることがわかります。この庭の素敵さについては、いくら言葉を尽くしてもそれに値する表現ができませんので、写真(撮影・上松氏、一部編集委員)をとっくりご覧ください。


コンパニオン・プランツ達

 ご夫妻が現住所に居を構えられたのは、今から44年前の1974年夏のこと。その頃は、小さかったお子様方のために芝生を広く取られ、当時人気のあったサツキ、ハナミズキやシラカバなどの樹木を植えたものの、バラは2株程度だった由。それが、15年ほど前、奥様がご近所のバラいっぱいの庭をご覧になって、その魅力にとらわれたのがきっかけになり、ご自分の庭もバラで満たしたいという志が芽生え、急速に大きくなったとのこと。そうなると、いい加減なことでお茶を濁すのはできないご性分、バラについての勉強を一から始められるとともに、ご夫君にリクエストされ、お二人でガーデニング、とりわけバラの栽培の本場、英国はコッツウォルズのイングリッシュガーデンを2003年6月後半一週間に亘って見学、研究して回られたそうです。帰国後、公園のバラの世話をするボランティア活動を経て、いよいよ自前のバラ園造成に奥様主導で乗り出されました。

 庭の大改造には当初、二の足を踏まれるご夫君を説得される形で100株もあったサツキなどを抜いて、主に蔓バラを植えられ、文字通り丹精込めて育てていかれました。ご主人もその過程で理解を示され、全面的に協力されたのは言うまでもありません。 バラ栽培の奥は深く、世話にも大変手がかかりますが、お二人の注ぐ愛情や、情報交換をする同好の士との連絡網を通じた切磋琢磨もあって、年々立派になっていった上松家のバラの庭は、ほどなく、ガーデニングの一流誌「マイガーデン」誌2013年春号に、「一目見たい!『噂のバラの庭』」と題して8ページにわたり、沢山の大きなカラー写真入りの特集記事で紹介されるに至りました。


 夢がかないバラいっぱいになった庭に、ご夫妻とも大満足でしたが、7年ほど前に、「バラ、ばら、薔薇の庭に、圧迫感」も感じだし、また、バラの季節が終わった後の寂しさもあって、バラだけでなく、バラとともに他の草花や樹木も楽しめる庭に憧れを感じられるようになりました。偶々その憧れに適うような庭の持ち主との邂逅があり、その指導を得ながら、再度庭の改造を果たされました。樹木や草花の中にバラが咲いているという雰囲気に変えたのです。取材チームが拝見した庭は、将にそのような道程、紆余曲折を経て、四季それぞれに楽しむことのできる、現在の上松家のお庭でした。繰り返しになりますが、ここに掲載する写真の数々でその雰囲気を味わっていただければ幸いです。 ゆっくりと庭を拝見した後は、奥様お手製の、質量ともに豊富な美味しいおやつを堪能し、取材チーム一同すっかり満足して暮れなずむ上松家とその庭を後にしました。


(HP編集委員会)



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