行事報告

2021年04月30日 行事報告

2021年4月度関東地区社友会月例会

日 時 2021年4月20日(火)14時~15時
場 所 Web会議システムZoomを用いたオンラインでの講演
講 師   今村 卓 氏(丸紅㈱執行役員・丸紅経済研究所長)
演 題 「これからどうなる日本と世界 
-コロナ禍、米中対立、日本・世界の政治経済の展望-」

 関東地区の月例会は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2019年10月を最後に開催しておりませんが、いまだリアルな集まりは困難なため、今回初めてオンラインにて試験的に実施いたしました。
 講師には、お馴染みの丸紅㈱執行役員・丸紅経済研究所長の今村卓氏をお迎えして、「これからどうなる日本と世界―コロナ禍、米中対立、日本・世界の政治経済の展望―」と題して講演いただきました。コロナ禍で先行きが見通せない中、また、菅首相とバイデン米大統領との初の日米首脳会談の直後というタイミングで、日々流動的な内外情勢をわかりやすく整理・解説いただきました。
 なお、Zoomによるオンライン講演には90名を超える方が参加されました。
 以下は、講演の概要です。



 まず、コロナ禍の現状について、新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、死者数は世界で300万人を超えている。最近はブラジル、インドなどで変異種の感染が拡大している。日本は世界的にみれば抑え込んでおり、感染者数・死者数は少ないものの、ワクチン接種率は極めて低い。
 ワクチン接種率(人口に対する割合、4/17現在)は、イスラエル(62%)、英国(48%)、チリ(40%)、米国(39%)の順で高く、接種率は国別に大きな格差が生じている。ワクチン調達面で、イスラエルはユダヤ人ネットワーク、チリは中国製ワクチンの受け入れが大きいと言われている。一方、日本の接種率は治験等の硬直的運用もあり、1%程度にとどまっている。

 新型コロナウイルスの影響下、IMF世界経済見通しによると、世界全体のGDP成長率は2020年実績△3.3%の落ち込みに対して、2021年は6.0%、2022年4.4%とワクチン開発効果もあり高い伸びを予想している。

 ただし、各国政府による政策支援とワクチン普及の度合いで、地域毎に経済回復の差が拡大している。米国では、新型コロナ対策として約6兆ドル(GDP比30%)の財政出動で景気を支え、日本も財政支出、融資・保証を合わせてGDP比では米国以上に実施したが、2021年予想は、米国6.4%に対し、日本は3.3%となっている。日米の景気回復の格差は、ワクチン接種率やコロナ禍克服の見通しの差から生じている。

 米国経済は、FRBの超金融緩和により景気・株価は回復したが、恩恵は富裕層に集中し、所得上位1%が保有する米国全体の家計純資産の割合は31%まで拡大している。コロナ禍が格差拡大を加速させた可能性があり、バイデン政権は経済政策の焦点を中間層・労働者に移し、積極財政と高成長で労働参加率アップをめざしている。

 米国では、長く「小さな政府」指向であったが、新型コロナウイルスの感染拡大で、政府の役割が再評価され、「大きな政府」への支持が民主党のみならず、無党派層にも増えている。バイデン政権は世論の変化も支えに「大きな政府」に舵を切った。
 また、3月には「米国救済計画法」を成立させ、景気刺激策だけでなく中間層以下・労働者の支援に重点をおき、家計への現金給付など巨額の経済対策実施しており、高い支持を得ている。
 さらに、「米国雇用計画」として、8年間で2兆ドル規模の交通・生活インフラなどへの投資計画を発表し、財源としては「企業増税」を打ち出している。

 一方、中国経済は、国内のコロナ禍の封じ込めにより、今年1~3月期の実質GDPは、前年同期比+18.3%とロックダウンを実施した昨年同期(△6.8%)からの反動もあり、大幅な伸びを示している。3月の全人代では財政出動や流動性供給に依存したパンデミック対策からの脱却を図るとしており、2021年通年では、8%レベルの成長となる見通し。

 日本経済は、残念ながら新型コロナの感染再拡大と行動自粛が景気回復の重石となっており、景況感の弱さが継続している。貸出は政府の資金繰り支援策で増加しているが、延命措置に近い状態。
 明るい話題としては、中国向け輸出の増加と2021年の世界経済の回復、また年後半にはワクチン効果が期待されること。

 株価は日本を含めて世界的に堅調だが、今後の焦点は米国の長期金利。足元では落ち着いてきたが動向には警戒が必要。

 4月16日に日米首脳会談が行われたが、懸念材料は台湾問題。2018年前後から、米国は対中関与政策を見直し、中国を国際秩序に挑む「修正主義勢力」とし、「戦略上の競争相手」と位置づけて、中国に圧力をかける強硬姿勢に転じた。幅広い経済安全保障政策を打ち出し、ファーウェイ等への先端半導体供給を規制するなど、バイデン政権下でもより厳しい対応となってきている。また、米国一国で対処できない課題については、国際協調路線に戻るとみられ、パートナーとしての日本の重要度が増している。

 最後に、日本では、2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されているが、バイデン政権も脱炭素に積極的な姿勢を示しており、4月22~23日に開催される気候変動サミットでは、2030年に向けた温暖化ガスの排出削減目標のコミットメントが求められることになろう。

(関東地区幹事:斉藤正視)



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