行事報告

2017年02月08日 行事報告

2017年2月度関東地区社友会例会行事報告

日時 2017年2月8日(水)12時より
場所 丸紅東京本社(東京日本橋タワー)23階大会議室
講師 沢松奈生子氏
演題 「ウィンブルドンの風に誘われて」

 2017年2月度の関東地区月例会では、元プロテニスプレーヤーの沢松奈生子さんをお招きし、「ウィンブルドンの風に誘われて」と題して、講演をして頂きました。沢松さんには一昨年の8月に、同じ演題にて関西地区の月例会で講演をして頂いており、大変好評であったことから、今回東京でもお願いした次第です。したがい、講演の概要につきましては、前回の行事報告もご参照頂くこととして、今回は講演の内容で特に印象に残った話題などを中心に、少し詳しくご報告したいと思います。

 講演会は先ず沢松さんのプロフィールを紹介するDVDの放映から始まり、沢松さんが曾祖父から続くテニス一家で生まれ育ったことや選手としての輝かしい経歴について紹介されました。その後、講演が始まり、中でも高校1年生の時に、あれよあれよという間に全日本選手権で優勝し、順風満帆のテニス生活が続くかと思いきや、勝ってからは注目を浴び過ぎて、負けられない、ミスが出来ないというプレッシャーに押しつぶされそうになったという話が印象的でした。10歳の頃、テニスを本格的に続けるか両親に問われた時、テニスが楽しくて取り組む以上は途中で絶対に投げ出さないと約束していたので、そんな時でも親や兄弟、友人には相談出来なかったとのこと。コーチに相談したら、「悩み事を紙に書き出すこと」とだけ言われて、答えは教えてくれません。ヒントだけ貰ったようで、正直がっかりしたそうです。それでも、もがき苦しむ中、それを自分で反芻する過程で気持ちの持ち方が少しずつ変わり、そのうち、このスランプは自分に自信のないことが原因であると気がつきました。自信をつけるには、一旦ハードルを下げてみること。それをひとつひとつクリアしながら薄っぺらな自信をつける。そのことの繰り返しが大切であると気がついたのです。具体的には、インターハイの兵庫県予選にまでハードルを下げて、そこで一試合ずつ勝ちを積み上げていき、結果的には県の決勝戦で敗れたそうですが、それでも大きな達成感が得られたとのことです。選手にとって、試合に出て勝つことがスランプから回復する特効薬であるということです。それこそ自分で自分の壁を破った瞬間であり、スランプを乗り越えた時すでに、スランプ前の自分を超えていることに気づきます。そうなると、今度は次にスランプが訪れても動じない。このスランプを乗り越えれば、さらに上に行けるという自信を持てるようになったと言うのです。

 これらのエピソードを通して、日本と海外の教育方法の違いや子育ての違いについて、考えさせられました。特に、ヒントを与えながら自分で考えさせ、最後は自分の判断で物事を決定する。約束した以上、とことん頑張る。こういった物事の進め方が、コート上ではコーチが口を出せないという、テニスの精神にも繋がっているようです。人を育てるためには、長所を褒めて伸ばすことが大切であると感じました。一方で、スポーツの世界で強くなるためには、相手に恐いと思わせることが大事。そのためには武器がないとダメとも仰います。すなわち弱点を克服するだけでなく、長所をとことん伸ばすことで武器を持つことが大切だというのです。教育についても同様、今の日本の教育では平均点を上げることに重きを置きがちですが、得意科目の更なる強化という点にも目を向けるべきではないかということです。

 大切なことは、夢と目標の違いを明確に区別し、これを上手く使い分けることにより、モチベーションを維持すること。目標は常に手の届くところに設定するものであり、それをクリアすることで達成感を覚え、向上心に繋げていく。ご自身も、これを徹底することで、過酷なプロ生活を乗り切ったとのことです。

 近年、錦織選手の活躍のおかげでテニスへの注目度は上がっていますが、実際には、テニス人口はピーク時と比べて大きく減少しているとのことです。特に若年層においてその傾向が顕著であり、その最大の理由はコート数の減少やスクールの閉鎖にあるとのこと。しっかり裾野を育てないと、トップ選手も生まれないと、テニス界の現状を心配されます。

 最後にご自分の座右の銘ということで、「あなたにしか咲かない花を咲かせてみよう」という言葉について話をされました。現役引退を前にして、今後自分に何が出来るだろうと悩んでいた頃、競技テニスは止めても、自分からテニスを取ることは出来ない、テニスとの関りを続けることが自分にとって花を咲かせることになると確信したとのことです。スポーツの楽しさをより多くの人に知って貰うために、今はテレビのスポーツ解説ばかりでなく、持ち前の明るい性格を活かして、情報番組やバラエティ番組などでも活躍されている沢松さんですが、この言葉は多くの中高年の皆さんにとっても、日々の生きがいや遣りがい発見のヒントになるものと思われるので、そんなことを考えるきっかけとなれば幸いと仰って、楽しい講演を締め括られました。会場には、テニスがお好き(と思われる?)な110名を超える社友が集まり、沢松さんの気取らないご気性溢れるお話を存分に楽しまれました。

 講演後の質疑では、元デュッセルドルフ駐在員の社友から、沢松さんが5-6歳の頃、デュッセルドルフでご両親からテニスの猛特訓を受けているところを目撃したという発言もあり、ご本人のびっくりしたご様子に会場が大いに沸きました。



(関東地区幹事:市村 雅博)



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