行事報告

2017年02月07日 行事報告

2017年2月度関西地区社友会例会行事報告

日時 2017年2月7日(火)12時~
場所 丸紅大阪支社(新ダイビル31階)
講師 丸紅経済研究所所長 美甘哲秀氏
演題 今年の世界政治・経済を読み解く

 2月7日(火)、大阪支社にて関西地区の月例会が開催されました。今回の講演会では、丸紅経済研究所の美甘所長をお招きし、“今年の世界政治・経済を読み解く”と題して、お話を頂きました。このテーマは、近年この時期の講演会恒例のものとなっていますが、今年は、米国の新政権発足などもあり、社友の関心も高かったのか、普段よりも多めの70余名が出席されました。講演の概要は、以下のとおりです。

昨年の「3大サプライズ」として、以下の3つを挙げることができる。

  1. 年初に起きた世界同時株安
  2. 英国国民投票におけるEU離脱派の勝利
    メイ首相は、EU市場へのアクセスが制限されても、「UKファースト(移民制限)」
    を重視する考え方を発表。
  3. 米国大統領選挙におけるトランプ氏の勝利
    低所得者・低学歴者など、これまでスポットライトが当たらなかった層を取り込むマーケティング戦略の勝利。

準サプライズと言えるのは、トランプ政権の誕生が決まった後の米国株価の大幅上昇。トランプ政権の政策は80年代前半のレーガン政権と似ている。ビジネスに優しい政策を採るのではないかと、市場はその点を評価し、期待が高まった。

  • 規制緩和への期待
    金融機関の貸出規制を緩和。シェールガス・オイルや石炭への規制緩和で、開発コストを引き下げる。
  • インフラ投資拡大への期待
    GDP18兆ドルの米国だが、10年間で1兆ドルと、多額の投資を実施する見込み。
  • 減税への期待
    可処分所得の増大による経済の押し上げを目指す。共和党の基本的理念である「小さな政府」を目指し、政府介入は控える意向。

ただ、米国新政権の政策には、幾つかの問題点がある。

  • アメリカファーストという大衆迎合的な政策であること。
  • 反グローバリズム=保護主義への傾斜傾向が顕著であること。貿易障壁軽減の枠組みを否定していること。
  • 反移民=排斥主義の傾向が強いこと
  • 米国一極から多極化へ移行=第2次世界大戦後、米国が主導し、世界が築いてきた国際秩序がどうなるのか?

自国ファーストの考え方は、米国や英国のみに留まらず、その傾向は、フランスをはじめとする、他のEU加盟国にも拡がりつつあり、今年のオランダ総選挙・フランス大統領選挙・ドイツ総選挙の結果が注目される。

世界経済全体では、緩やかな回復基調が期待できそう。

  • 米国は安定基調、ユーロ圏は底堅い。ASEAN5では比較的高い成長率を保つが、中国・中南米の経済は弱く、日本経済は力強さに欠けるという特徴を持つ。

日本のマイナス金利政策の影響は?

  • マイナス金利の下では、政府の財政コストが軽減され、財務体質の良好な企業を中心に、借り入れ金利は低下する。
  • 不安要因としては、金融政策の出口戦略には時間が掛かる。出口戦略が始まれば、短期金利が高まり、長期金利も急騰。その結果、債券価格が急落して、日銀をはじめとする各金融機関が、膨大な債券評価損の計上に追い込まれる恐れもある。しかし、現状、日銀は出口戦略について一切語ろうとしていない。

講演終了後、為替・日経平均の予想についての質問があり、以下のような回答があった。

  1. 為替の動向は、日米の金利差による影響が大きい。その意味では、今後、米国の金利は上昇が予想され、金利差は拡大する傾向にある(円安ドル高?)。ただ、日米の購買力平価でみる理論値では、1ドル105円程度であり、また、トランプ政権が米経済の後押しのためにドル高を牽制していることもあり、120円を超えるような円安は考えにくい。また、一方的な円高もなさそう。
  2. 株価は企業業績や為替レートによるところが大きい。円は大幅安にはなりそうにないことから、日経平均が2万円台に乗せる力はなく、18,500-19,500円のレンジ。株価の暴落はなさそう。

以上



(関西地区幹事:藤原 潤一)


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