行事報告

2019年07月08日 行事報告

2019年度関西地区6月度月例会

日 時 2019年6月20日(木)12時より
場 所 丸紅大阪支社31階大会議室
講 師 特定非営利活動法人ウェアラブルコンピューター研究開発機構理事長
国立大学法人神戸大学大学院工学研究科教授
塚本 昌彦氏
演 題 「人工知能(AI)とウェアラブル(身につけるコンピューター)で大きく 変わる私達の生活 」

 6月20日開催の、関西地区6月度月例会では塚本昌彦神戸大学大学院工学研究科教授をお招きし、「人工知能(AI)とウェアラブル(身につけるコンピューター)で大きく変わる私達の生活」と題した講演をお願いしました。
梅雨入り前で、不安定な気候が続いていましたが、当日は幸い晴天に恵まれ55名の社友が参加されました。

 以下が講演の概要です。


 

1.    平成期の30年間は世界的に不況が続き、新しいものが出て来なくなってしまった。
  昭和期に活気があった日本の製造業は失速し、ものづくりのマインドが低下、ネガティブ社会が定着して来た。国際関係では米中関係が悪化し、世界的に不安感が漂っている。しかしながら、私はこれから潮目が変わるのではと感じている。今後の5年〜10年にAI(人工知能)とウェアラブル(身につけるコンピューター)の進歩で産業は大きく変化し、人々の暮らしを変えて行くだろう。私は、昭和期のように日本がものづくりの先陣を切ってイノベーションを起こして行ければと願っている。
 コンピューターによりこの50年で社会は大きく変化した。現在はスマホが隆盛を極めているが、次のステップはAIとウェアラブルだろう。これらが5年位のスパンで、私たちの暮らしに大きな変化を与えると考えている。ウェアラブルは暮らしの中で人間の活動に組み入れた使い方になる。メガネ型のウェアラブルの現状は、未だ利用が限られているが、今後は大きく伸びると予想している。AIは認識機能が大きく進んでおり両者を組み合わせると社会構造に大きな変革をもたらすと思う。デジタル化が進んだ事で人間社会は相互監視の目が強まり、悪事を隠せない世の中になって来たと思う。いわばここ10年で「正直な善人の時代」に変わって来たのではないだろうか。
 人工知能やロボット開発の急激な進展は、一方で人々に様々な不安を抱かせている。このうち、人工知能が人間の仕事を奪うのではという恐れは半ば当たっているが、現在流行っているYouTuberのように、これまでにない新たな仕事が生まれてくるだろう。人工知能やロボットの脅威については懸念もあるが、当面人間が上手く使いこなして行くと考えている。ロボット+AIは今後急激に進化が見られるだろう。ロボティックスと融合して人間の身体機能の飛躍的な強化が期待出来る。斯かる方向性から10年後を見通すと、「スマホ(モバイル)→スマートグラス(ウェアラブル)へ」、「生活空間のIoT管理が進む(AIに依る監視社会化)」、「ICタグの利用拡大での利便性拡大」、「AIの活用が進む、汎用人工知能化」が見込まれる。AI・ウェアラブルの充実は脳科学、医学の進歩と組み合わせると人類の可能性が大きく広がる。



 

2.    近未来の予言として、(1)人間が手掛けてきた仕事がAIに置き換わり、人間は新たな仕事に携わるようになる(遊びのような仕事) (2)自動運転は10年以内に実現する。交通手段に様々な変化が起きる (3)ドローン配送の一般化・ドローン活用の深化 (4)ICタグの活用でスーパーのレジがなくなる (5)病院などの待ち時間が無くなる (6)ウェアラブルデバイスが社会に浸透する (7)IoTが暮らしに浸透する (8)AI政治、AI経営、AI投資が一般化・汎用人工知能の深化 (9)ロボットが暮らしに浸透する (10)サイボーグビジネスが拡大する未来は思ったより早くやってくる。追加予言だが、私は10年以内にサイボーグになるつもりだ。


 

3.   さらに先の未来はどうなるのか?  
 将来人類はどうあるべきか?新しいことが起きる期間はどんどん短くなっており、私達は今、大きな変化の手前に居る。
 シンギュラリティ(技術的特異点)とは一般的にはAIが人類の知能を超える転換点と言われているが、私は人類の発展曲線が急激に変わる点がシンギュラリティだと考えている。人類は将来、脳科学と情報科学の進歩で、人工知能と融合しつつサイボーグ化しながら発達して行くだろう。これが進むと遂には人の不老不死に繋がるのでは無いだろうか?そうなれば世界の秩序は根本から変わる可能性がある。永遠の生命の獲得も2040年頃には可能になるのでは?その後は人工知能が科学技術を発展させて行く。シンギュラリティで科学技術のあらゆる問題が解決されて行く。
 未来想像のポイントは人類がどうありたいか、何が最も大切かをしっかり考えることであろう。冒頭で言ったように、デジタル化の進行で相互監視、相互評価が進み、「正直で良い人」が更に増えて行くものと思う。今できていない事も早晩実現されるかも知れず、何が幸せか、人類がどうありたいかを考えるべきである。
 社会の変化で働く事、儲ける事の意味が変わってくる。リアルとバーチャルについては、バーチャルはなんでもできるが危険、人類はあくまで実世界の中でリアルに生きるべき。価値観の変化で仕事、遊び、家族、親子、婚姻、政治など、社会の在り方に大きな変化が生じると予想される。AIやロボットの進化に伴い人間中心主義も変化して行くだろう。
 これからの最先端研究とビジネスは、世界の中で日本がスピード感を持って主導権を握るべきである。その為には倫理指針をしっかり持ち人間は何のために生きているかを考え、社会の維持・運営を意識し、コントロールしながら様々な制約については速やかに規制緩和を進めるべきである。最後に、ここにいる皆さんが30年後も健康で、長い人生を楽しみながら人類文明の良き進歩のために貢献されていることを予言したい。


 

 講演後の質疑では3名の方から、それぞれ、科学の進歩と人間の持つ良心との兼ね合い・宗教の役割をどう考えるか、ウェアラブルデバイスの画像は目に悪影響は無いのか、また、Netが繋がらない場合にAI・ウェアラブルに問題は無いのかと言う質問が出され、塚本教授が真摯に答えられました。
 
 尚、今回の講演はNPO法人国際生涯学習文化センター/OCC大阪市民大学センターにご協力頂きました。

(関西地区幹事 山西正展)



行事情報トップページへ