日 時 | 2019年2月19日(火) |
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場 所 | 丸紅大阪支社31階大会議室 |
講 師 | 今村 卓氏(丸紅経済研究所 所長) |
演 題 | どうなる米中貿易戦争、世界経済の行方は? |
2月19日(火)に開催された「関西地区2月度月例会」では、丸紅経済研究所の今村卓所長をお招きし、“どうなる米中貿易戦争、世界経済の行方は?”と題して講演をしていただきました。小雨の降る肌寒い日でしたが、60名の社友が参加されました。
以下が、講演の概要です。
1. 2019年の世界経済の減速は避けられず。一層の下方リスクに留意が必要。米国は底堅く動くものの、Brexitやイタリア財政問題によるユーロ・EUの減速、1月度に自動車販売が対昨年比15%減にみられる中国経済の減速がリスクとなる。又、金融政策では、量的緩和解除プロセスの欧米の動向にリスクの芽が残る。米国の2019年度の利上げ観測は2回から1回若しくは0と予想が変化している。日本は緩和的な金融政策を維持せざるを得ない。
2. 米中貿易戦争に関し、米中貿易協議は延長になり、米国の保護主義が続く恐れがある。3月1日期限の米中貿易協議は部分合意があるものの、交渉継続・制裁関税引き上げは延期される見込み。トランプ大統領が2020年の再選と公約の実現を目的としていることが最大の理由。米国は長年続けてきた“中国を米国主導の国際秩序に招き、米国経済への自由なアクセスを中国に与える”という対中国政策が失敗だったとの認識のもと、今後の政策転換が必要。
3. 米中対立。米国は安全保障上の懸念から対中技術流失の阻止へ。重要技術の防衛、規制・制度運用・法執行の強化も。中国による南シナ海の軍事拠点化やサイバー分野での軍民融合強化での対立。米国による投資管理強化、輸出管理強化、5G等通信関連の政府調達・使用制限等。渡航制限などの可能性も。中国のスパイ活動による知財窃取活動への対応強化等。トランプの貿易赤字削減に対する意欲と米中の経済相互依存の関係を考慮すると、トランプ流ディールによりどの程度の段階で止まるのかで今後の判断材料となるか。
4. 2019年の経済は、米国は減速するが、大きな崩れはない。ただ政治の不安定が不透明要因。欧州は減速がより顕著になる。Brexitや米中貿易摩擦が大きく影響。ポピュリズムの台頭・拡大に注意が必要。中国は減速するも、更なる景気悪化は回避できる。債務の拡大による投資の拡大という手法はそろそろ限界にきたか。日本も景気拡大は続くが、速度は緩やか。労働需要は逼迫しているが、賃金が伸び悩み、実感が湧かない緩慢な回復が続く。消費増税の影響は少ない。
5. 産業関連分野の今後の注目点として、グローバル・バリューチェーンの再構築の加速の可能性、データ活用のモーメンタムの趨勢的増大、エネルギー需給をめぐる不確実性の高まりなど今後訪れる転機に注意が必要。
講演後の質疑でも、4名の方より、今後の金融政策が実体経済に与える影響の見方や、今後のインドの経済発展の動向・見通しなどの質問がありました。今村所長からは、「日本の金融政策が次の景気後退の段階で取る施策は非常に限定される。インドは7%超える成長率を継続できるアジア唯一の国ながら、世界経済をけん引するまでの成長にはまだ時間がかかる」との説明がありました。
(関西地区幹事:川井 保範)