行事報告

2018年04月23日 行事報告

2018年4月度関東地区社友会例会行事報告

日時 2018年4月23日(月)12時より
場所 丸紅東京本社(東京日本橋タワー)23階大会議室
講師 今村卓氏(丸紅経済研究所所長)
演題 「どうなるアメリカ、迷走するトランプ政権の行方と日本への影響」

 今回の講演は、丸紅経済研究所の今村卓所長をお迎えし、「どうなるアメリカ、迷走するトランプ政権の行方と日本への影響」と題して、今、ホットなテーマに期待して集まった100名超の社友に向けて、お話を頂きました。
 今村氏は、1989年に入社後、調査部経済調査課配属からスタートし、国内外の研究機関への出向、丸紅経済研究所チーフエコノミストを経て、2008年から2017年9月まで丸紅米国会社ワシントン事務所長を務め、同年10月から現職就任されています。

 講演では、先ず、米国経済について触れ、米国景気は2017年からの流れによって好調を持続し、「適温経済」「適温相場」から過熱リスクを含む景気拡大と割高の調整もある市場へと展開も伺う状態となっている。また、大幅な税制改革は一定の景気刺激効果を示しており、年0.3%前後のGDP押上げ効果との予測が大勢となっている。しかし、一方では財政収支の改善を目指す規律は緩んできており、トランプ政権の今後改善するという主張は非現実的と見られている。議会予算局(CBO)の試算によると財政赤字は今後10年近くGDP比5%前後が続く見通しであるとのこと。

 一方、政治の面で政権公約の達成具合からレヴューしてみると、税制改革が最大の成果と言える。又、支持率の面から見てみると、歴史的には最低水準のままだが、共和党支持層の85%の支持を得ており、その基盤は崩れていない。しかし、中間選挙については共和党、民主党ともに決定打を欠き、どちらに傾くか予測不能な状態にある。共和党の動きを見ても、トランプ氏批判よりも再選が最優先として批判を控える様になっている。また、政権の陣容を見てみると、やはり高官の空席が多いこと、辞任が増加していることは数字が示しているし、この傾向は歯止めが掛からないと思われる。この要因の一つとしては、トランプ政権が従来の政権と異質の人材を陣容に取り入れていることが、ワシントン周辺にいるスタッフになり得る補充要員に手を挙げることをためらわせてることが考えられる。外交・安全保障面から見てみると、政権発足当初は、マティス国防長官、ケリー首席補佐官、マクマスター大統領補佐官、ティラーソン国務長官が大統領の暴走を抑えていたが、最近は自分の意に沿わないメンバーは更迭し、トランプ氏個人の企業と同じ感覚で運営するような方向に向かっているように見える。また、ロシア疑惑については、モラー特別検察官の捜査が相当進んでおり、トランプ氏の個人弁護士コーエン氏にまで及んでいる。これに対して、トランプ氏がモラー氏の解任を狙うかだが、これはウォーターゲート事件の二の舞になり、自殺行為との評判も出ている。
 次に、通商政策を見ると、トランプ大統領は有権者に理解されやすい通商分野で公約を果たそうとしていることが窺える。政権1年目はブレーキを掛けていた自由貿易派が去り、経済ナショナリストに主導権が移り、大統領の意向を反映しやすい体制が拍車をかけると推測される。中でも米中の関係は大変な困難が予想される。両国の関係は、かつての日米の摩擦とは規模において各段の差がある大きなものである。また、最近の米国は中国に対して強い警戒感を抱いており、嘗ての日本が対米直接投資の拡大により摩擦の緩和を図ったという手法は使えそうもない。従い、米中摩擦は長期化せざるを得ず、それ故、貿易戦争等の暴発リスクは排除できないことになる。

 さて、最近話題の米朝会談についてだが、北を交渉の場に引っ張り出したことは成果であるが、その後の展開について何かを持っているかは疑問である。政権として、北の譲歩に対して、何を与えるのかについて現状ではコンセンサスができていないし、国務省が機能していない中で、早急に詰めることができるとも想像できない。皮肉な意味で、大統領の力量が試される場になってしまうかも知れない。

 この様に、トランプ政権については大変予測、対応の難しい状況であり、今後とも注視していくことが重要とのことで講演を終わられました。





(関東地区幹事:川副 信二)


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