行事報告

2018年02月14日 行事報告

2018年2月度関東地区社友会例会行事報告

日時 2018年2月14日(水)12時より
場所 丸紅東京本社(東京日本橋タワー)23階大会議室
講師 一色清氏(朝日新聞社教育コーディネーター)
演題 「テレビコメンテーターという仕事」

 今回の講演会では、テレビ朝日の報道・情報番組「報道ステーション」や「グッド・モーニング」のコメンテーターとしてお馴染みの、朝日新聞社教育コーディネーター、一色清氏をお招きし、「テレビコメンテーターという仕事」と題して、テレビコメンテーターの仕事の内実について、興味深いお話を聞かせていただきました。一色氏は1978年に朝日新聞社に入社、経済部を中心に記者生活を送られたのち、2008年10月に、「報道ステーション」のコメンテーターとしてご出演以来、テレビに活躍の場を広げられ、特にジャーナリストとしての幅広い知識・経験を活かした的確な解説・コメントを武器に、コメンテーターとしての力を遺憾なく発揮しておられます。

 昨今のテレビの報道・情報番組になくてはならない存在の「コメンテーター」とはいったいどんな仕事をしているのでしょうか?それが本日の講演の最大のテーマです。一色氏の講演はまず、「コメンテーターはなぜ必要か?」という核心に近い部分に切り込みました。そしてその答えは、報道・情報番組は生放送が基本であり、しかもニュースとエンタテイメントの中間に位置づけられるという特性を持っていることがポイントであると説明されました。すなわち、出演者の発言は基本的に取り消し不能で、発言には常に安定性、安全性が求められるということ。またニュースにも付加価値が求められ、エンタメとしての「賑やかし」の要素も求められている。視聴者はニュースそのものに加えて、そのニュースが自分以外の他人にどのように受け止められているかという情報も求めている。したがって、そこにテレビ局員以外のコメンテーターの存在意義が生まれるというわけで、テレビ局から見れば、それはある意味で逃げ道ともなっていると説明されます。

 次に、「では、コメントとは何だ?」というテーマに移ると、一色氏は、「解説と意見と感想」に区分けされると答えます。要は、自分の専門性の濃淡により、よく知っている分野については、解説のレベルで詳しく説明するが、それほどでもないテーマについては、淡々と意見として述べる、さらに門外漢に近いテーマであれば、一般人の感想としてコメントする。そういったメリハリが大事だが、注意しないといけないのは、知っていることについては喋り過ぎる傾向が強くなるので、そんな時こそ、視聴者に何を伝えたいのか絞り込み、大枠で捉える力、話法が大切になると…。要は、「ザクっと言えば…」とか、「要するに、…」といった感覚が大切であるとのこと。そして何よりも大事なことは、視聴者の共感を得られるか、視聴者に「得した感」を与えられるかということであると説明されます。

 次のテーマは、「重宝されるコメンテーターとは?」という問題です。テレビ局としては、放送事故のような事態を生じさせないため、常にコントロールできる範囲のコメンテーターであって欲しいというのが本音であるようですが、そうは言っても、番組視聴率の観点からは、無難過ぎても面白くないため、適度な刺激性はあって欲しいと考えているとのことです。そのため、コメンテーターとしては、幅の広いコメントが出来て、相対的にコストの低い出演者が重宝されることになるのだそうです。

 長年コメンテーターを務めておられて、ある意味で逆説的なのですが、番組中のコメントの影響力というものは意外と限定的であるというお話は印象的でした。それはテレビ画面が発する情報量の多さに由来するもので、言葉は、その多くの情報の中のひとつに過ぎないことから、発言内容そのものについての反応が、相対的に小さくなってしまうとのことです。活字の情報発信力と比べると、テレビのそれは想像していたほど大きくないと感じられるそうで、著名なコメンテーターのご発言だけに、その意味する所に考えさせられるものがありました。

 最後のテーマとして揚げられたのは、「テレビ局は時の政権から圧力を受けているのか?」という問題です。現在は政権の力が強く、政権側から圧力が掛かっているのではないかと感じられるケースも散見されますが、これには政権の体質やテレビ局上層部の意識が大きく関わっており、結局は力関係の問題であるとのことでした。

 正直言って、こんなコメントを発するくらいだったらいない方がマシといったお粗末なコメンテーターも少なくない中、本日の講演は、テレビコメンテーターとしての強いプロ意識と自負心が感じられるもので、大変興味深い内容でした。普段視聴者としては、何気なく情報番組を見ているだけのことが多いのですが、日々起きる事件や事象に対して、正確な情報を見極め、健全かつ的確な自分なりの意見を形成することが大切であると、あらためて再認識した次第です。



(関東地区幹事:市村 雅博)


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