日 時 | 2016年2月4日(木) |
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場 所 | 丸紅大阪支社31階大会議室 |
講 師 | 丸紅経済研究所所長 美甘哲秀氏 |
演 題 | 出口戦略後の世界経済を読み解く -金融市場の不安定化は続くのか?- |
2016年1回目の社友会関西地区月例会は、丸紅経済研究所の美甘所長を講師としてお招きし、米国の出口戦略後の世界経済を占うという主旨の講演をして頂きました。会場には多くの社友が集まり、世界経済や金融市場動きについての分かりやすい解説に熱心に耳を傾けておられました。以下、講演の概要です。
年初から昨年夏を想起させる株価の下落局面が続いている。米国の出口戦略の始動、新興国の成長期待の低下、資源安が複合的に影響を及ぼしており、株価下落や市況下押しの要因となっている。過去のグローバルな危機(アジア通貨危機、リーマンショックなど)をみると、金融機関の経営悪化、破綻など金融システムへの悪影響が引き金となっている。今回も銀行の不良債権問題などに着目すべきであろう。
米国の出口戦略は、資産売却を伴う長い道のりであり、終了には2020年代後半か2030年代まで時間が掛かるかもしれない。米国の政策金利引き上げは穏やかなペースで実施されると予想され、世界規模の金融市場の不安定化の継続に鑑み、利上げに抑制的になる可能性も伺える。米国の出口戦略(利上げ)は金利差でみれば円安に向かう筈だが、現在のようなリスクオフの状況では安全資産とみなされる円が上昇している。
一方、世界経済を牽引してきた新興国に息切れ感が見られ、その成長率は相次いで下方修正されている。中でも中国が最大の注目点である。中国は現在構造調整の最中で、景気の減速はやむを得ないところがあるが、中国の資源吸収力低下の影響は大きい。米国の金利引き上げ及び新興国に対する成長期待の低下は新興国の資本流出、通貨安、株安とワンセットで起きており、新興国ショックは世界中に伝播している。今後、中南米を中心とした国々が、景気の悪い中、通貨防衛の為の利上げを行うことには要注意である。
商品市況は2011年上半期をピークに反落する中、堅調だった石油も生産過剰の為、2014年の年央以降、大幅下落となっている。資源安の影響は全体としてみればプラスとの見方が多かったが、効果は限定的で、予想以上に悪影響を及ぼしている。露、中南米、アフリカ諸国などでは想定以上の経済減速を招き、産油国では、投資減や財政赤字補填の為の政府系ファンドの売却を強いられている。米国では、石油メジャーの収益力低下やシェールオイル関連の経営不安定化・破綻が発生し、株価押し下げの要因となっている。
最後に、国際情勢をみるに、中近東に於ける宗教抗争の基軸は、「サウジ対イラン」であるが、その背後には、米露の影がちらつくなど、不穏な様相を呈しており予断を許さない。
(文責:羽場 知廣)