行事報告

2016年06月29日 行事報告

関西地区6月度月例会

日 時 2016年6月29日(水)
場 所 丸紅大阪支社31階大会議室
講 師 大阪大学大学院 心臓血管外科 澤 芳樹 教授
演 題 「心筋再生治療の現状と展望」

 2016年関西地区社友会6月例会は、大阪大学大学院・澤教授をお招きし、心筋再生治療研究の取組みについて講演して頂きました。澤教授は、心臓血管外科臨床分野の第一人者として活躍されており、その研究成果は世界中の注目を集めています。会場には多くの社友が集まり、熱心に耳を傾けていました。以下、講演の概要です。


大阪大学医学部/付属病院の沿革


 大阪大学医学部/附属病院の源流は、幕末の蘭学者・緒方洪庵先生開設の除痘館・適塾で、その倫理感は現在も当医学部の校風・理念となっている。1869年大久保利通の進言で政府直轄の大阪仮医学校/仮病院が開設され、その後、1931年に大阪帝国大学医学部/附属病院に改組され現在に至っており、2019年には医学部開設150周年を迎える。


心不全治療の取組み


 我が国の心臓手術の歴史は60数年ながら、弛まぬ臨床研究と器材のハイブリッド化により手術数は増え術後の死亡率は驚異的に低下してきている。
 日本の高齢者の死亡原因の第二位は心不全・心疾患であるが、今後更に増加が予測される。現在、重症心不全の治療法は、人工心臓の埋め込みと心臓移植が柱となっているとは言え、人工心臓の耐久性には限りがあり、一方、臓器提供には提供数が僅かしかなく急激な増加は期待出来そうにない。
 このような環境下、弱った心筋細胞を重症化させない再生治療研究に取組み、足の筋肉の細胞培養で作った細胞シートを心臓表面に貼り付けることにより心機能を回復させることが可能となった。この治療法は今年から成人向けに保険診療の適用対象になっている。
 しかし、足の筋肉から作った細胞シートの働きには限りがあり、壊死した心筋細胞には効果が無い。現在、京都大学・山中伸弥教授や理化学研究所・高橋政代先生共々iPS細胞の臨床研究を続けており、心筋に近いiPS細胞で作ったシートの開発による重症化した心不全の治験に取組んでおり、早期の実用化を目指している。
 日本の再生医療の取組みは世界の最先端を歩んでおり、心臓病で命を落とさない日本を作ることを目指すと共に、日本で生まれた医療技術で国際貢献もしていく所存である。





(文責:羽場 知廣)


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