行事報告

2016年10月26日 行事報告

中部地区10月度月例会

日 時 平成28年10月26日(水)12:00~13:30
場 所 丸紅名古屋支社 9階会議室
講 師 丸紅名古屋支社長 熊木毅氏
演 題 「カタールLNGプロジェクト等 中東情勢について」

 今回の講演会では、本年4月に丸紅名古屋支社長として着任されました、熊木毅氏にお願いし、現地での駐在を含め長年携わって来られた「カタールLNG(液化天然ガス)プロジェクト」を中心としたお話をして頂きました。お忙しい中、多くの資料準備と講演をして頂きまして、この場をお借りし、厚く御礼を申し上げます。なお、出席者は社友17名と現役4名の合計21名でした。以下、講演の概要です。


 カタール国は1971年に独立、同年にノースフィールドガス田が発見され、84年に国営のガス供給会社、カタールガスが設立された。85年に日本の企業として初めて丸紅が参画し、その後、89年に三井物産が参画したが、LNG事業が会社としての新規事業であった丸紅は、種々学びながらのプロジェクト推進となった。スタート当初の担当者たちは膨大な業務に忙殺され、かつ時差のある関係各国との対応で睡眠不足に悩まされながら奮闘努力する状況だった。三井物産はアブダビ等での経験で、すでにLNG事業に知見があり、参画当初は、彼らが主導的な立場を取ることとなり、悔しい思いや多くの苦労もあった。ただその後、徐々に丸紅の新規事業推進に向けた熱意と努力が顧客の中部電力他から評価を受け、物産とも対等の立場で事業を推進出来るようになった。


 カタールの天然ガスは、ノースフィールドガス田での採取処理後、ラス・ラファンのLNGプラントで精製・液化(マイナス162℃に冷却)した上で、専用桟橋からLNG船で海上輸送されるが、初期段階の多くの困難を乗り越え、1996年12月24日、待望の初荷出船となった。ただ、現地での祝賀行事は行われず、華々しく門出を見送ることは出来なかった。ところが、当時ドーハ支店マネージャーであった私は、休暇を取得してシンガポールへ出掛け、マラッカ海峡を遠望していたところ、大型のLNG船が悠然と航行して来る姿が視界に入って来た。ほぼ確信に近い思いで、その姿を見続けていたが、後日確認したところ、正しくそれはカタールから日本に向かう初荷LNG船の歴史的な雄姿だった。その後の日本からの連絡で、日本側の初荷受け入れも無事に完了したことを知り、心からホッとした。


 翌1997年2月、日本からVIP100名以上が現地のプラントに集い、大々的に竣工式が開催されたが、当時のカタールはインフラが未整備で、ホテルや車の手配等、現地での対応は大変だった。また、1997-2001年は仮価格でのデリバリー状況で、当初からハードな価格交渉が続いた。ただその後は、油価上昇にも助けられ、カタールガス1プロジェクトは順調に推移し、2005年には700万トン/年から970万トン/年に生産体制が増強され、丸紅の企業業績に大きく貢献し続けている。


 カタール国としても、LNG事業は基幹産業として大きく発展し、2010年末には77百万トン/年の生産体制を確立し、世界一のLNG輸出国となった。
 2011年3月に発生した東日本大震災と、原子力発電所の被災に伴う日本の電力事情の激変に際して、カタール国は早々にLNG追加供給の支援態勢を取った。世界に先駆けたカタールガスプロジェクトに対する当社を始めとする日本政府・企業の事業推進・支援が、その礎になったと言える。


 丸紅の参画から始まったこの事業が、多くの日本企業の参画を促し、カタール国経済の発展に大きく寄与する一方、この間、培われた両国の信頼関係と絆によって、日本社会へも大いに貢献することとなりました。今回の講演では、カタールLNGプロジェクトが海外における資源開発プロジェクトの成功事例として、大いに感銘を受けました。





(文責:立川 賢司)


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