行事報告

2015年02月04日 行事報告

関西地区2月度月例会

日 時 2015年2月4日(水)
場 所 丸紅大阪支社2階講堂
講 師 丸紅経済研究所 所長 美甘哲秀 氏
題 目 市場変動が高まる2015年の世界経済

 2月度月例会は、丸紅経済研究所の美甘哲秀所長を講師にお迎えした。ご講演内容の要約は次のとおり。


1) 現在ボラティリティ-(市場変動)が非常に高まっている。


  1. 株式市場のup/downが激しく、一日で300~400円の騰落となることも珍しくない。
  2. コモディティ-価格の変動。油価は2014年央の$107から今年は一時$40台半ばまで下落。
  3. 長期金利に歪みが起きている。日本の10年国債利回りは0.4%、スイスの10年国債ではマイナス金利。バブルが起きやすい環境ではないか。

2) ボラティリティ-を高める要因


  1. 米国の利上げ政策に対し、日欧は量的緩和策を継続。金融政策は真逆。
  2. 原油安により原油輸出国、輸入国の実体経済に影響。米国金融市場が不安定に。
  3. ギリシャに反緊縮政権が誕生し欧州問題が再燃。
  4. 中国の成長に陰り。かつての10%から7%成長がノーマルな状況に。
  5. 米国では、内政面で共和・民主が対立。米国の消極的外交政策によって、世界はリ-ダ-不在(Gゼロ)の状況。中国の軍事的台頭、中近東情勢の悪化に対応できず地勢学リスクが増大。

3) 世界経済に与える影響


  1. FRB(米国の中央銀行)の出口戦略は量的緩和策終了後、利上げ、償還資金の再投資終了、資産売却と続くが、完了見込みは2020年以降で、まだまだ長い道のり。今後、長期金利の上昇は国債価格の下落を招き、中央銀行・民間銀行は債券の評価損を計上することとなる。
  2. 原油安は原油輸入国では石油製品はじめ全般的な物価下落→実質購買力上昇→消費増、企業収益増→生産・雇用・投資は増加。また貿易相手国の輸出増となる。一方、原油輸出国では輸出減→政府歳入減→投資・政府支出減、雇用減、消費減など負のスパイラルが起こる。また貿易相手国の輸出減となる。
  3. アメリカは大産油国であると同時に大消費国であり、原油安→石油メジャ-・シェールオイル会社の業績低下→株式市場の下落を引き起こす。また投資家がネガティブになり日欧・新興市場に株安の連鎖が起きる。国際収支の悪化でベネズエラなど一部産油国でデフォルトの可能性も出てくる。
  4. 反緊縮政権が誕生したギリシャではユ-ロ離脱をちらつかせているが、離脱をすれば新通貨(新ドラクマ)の価値暴落やインフレ発生で一番困るのはギリシャ自身。強硬派から徐々に方針転換し、EU、ECB、IMFとは、多少の債務減免や財政緊縮の免除などで決着することになろう。
  5. 中国では2010年以降、銀行経由の融資が抑制され銀行の外(シャドーバンキング)から金を流してきたが、これが膨大な金額に上っている。地方政府が主導するインフラ事業の採算悪化、不動産バブルの崩壊、企業破綻の増加が起こる可能性もある。まず、不動産不況から脱する必要があるが、不良債権の行方にも注視する必要がある。
  6. 米中関係の経済面・軍事面での停滞、日中領土問題、欧米による対露経済制裁・ル-ブル安、中国による国際的枠組みへの挑戦、イスラム問題などリ-ダ-不在による地勢学リスクが増大。

4) 日本経済は量的・質的金融緩和策の実施以降、株高と円安が進行し、昨年央からの油価下落で物価安、鉱工業生産は上昇している。輸出指数はようやく増加し銀行の総貸出し残高も上向きとなっているのは評価できる。このような状況下、成長戦略の評価は法人税の引き下げ、企業の稼ぐ力の向上、公的年金改革など安倍政権の意欲が反映されているが、実行段階で不透明部分も多い。
女性の就労、人口減・人手不足による外国人移民受け入れ問題、農協改革、混合診療など積み残された課題も多い。 





(文責:池田 理)


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