日 時 | 2014年6月27日(金) |
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場 所 | 丸紅東京本社16階講堂 |
講 師 | 井沢元彦氏 |
演 題 | 「中国、韓国・朝鮮とどの様に向き合うべきか―2000年に亘る東アジアの国際関係史を俯瞰して」 |
今回は、TBS記者時代の1980年に江戸川乱歩賞を受賞され、近年そのユニークな歴史観から益々人気が高まってきている作家の井沢元彦氏を講師としてお招きしたことより、最近では小泉元首相、福田元首相に次ぐ、120人を超える聴衆を集める盛況となりました。
講演は井沢氏自身が法学部を出て8年間TBSの記者をしていた時に、学校で習った歴史は余り役に立たない、これは教えている方も良く分かっていないからではないか?ということに気付かされた、と刺激的な自己紹介を含むプロローグで始まりました。
氏は「一つの外国語を知らざる者は母国語を知らず」というゲーテの言葉を学生時代に習い、比較・対比すると物事が良く見えてくる、外国に行ったときに外から日本を見ると客観的に見ることが出来る、比較するからよく分かると言います。ところが日本の歴史の先生は高校で日本史を勉強し大学では極めて細かい専門的な分野を学ぶ為、長い歴史全体や諸外国の歴史との対比が出来る歴史学者はいないと指摘します。
もう一つ、日本の歴史教育で大きく欠けているのは宗教に関する部分であり、その結果、日本人にとってキリスト教とイスラムの争いは何時まで経っても対岸の火事である。国際化とか相互理解と言いながら宗教に関する理解を深められる教育のシステムになっていない。中学や高校で教えてくれない歴史の中のこれらの大事な部分はむしろ若い人達に聞かせたいとの声が寄せられた所以でもあるでしょう。
中華人民共和国という国名の中華の意味は「真中の優れたところ」という意味であり中国にとって中国以外に国は無い、周辺は東夷であったり南蛮であったりと2000年以上に亘り劣るいわば中国の属国であって、その中国を支配した王こそ皇帝であり、その体制を支えてきたのが儒教であると、即ち「公」より「孝」が絶対的に優先する価値観であったと、孔子、孟子の話を引用しながら説明されました。また朱子学は両刃の剣であり、改革、即ちこれまで信じてきたことを変えることを許さない頑なさがあり、日本が明治以降いち早く西洋文明を取り入れたのに対し中国は完全に乗り遅れたのです。加え、西洋の近代文明を取り入れることが出来ず、清国の滅亡に至ったということです。
近代国家は「公」が優先する社会でなければならないが中国では未だにそれが成り立たないのと同様、隣の韓国でも「孝」が「公」に優先する。戦後の5代に亘る韓国大統領が全て本人或は親族の汚職で有罪になっているのも矢張り朱子学の為であり「孝」が「公」に優先していると一覧表を示してくれました。
そして北朝鮮も朱子学の国でありトップが世襲であり所謂共産主義国家とは言えない。むしろ朱子学の「孝」を重んじる思想がバックボーンにあり父親の権威が絶対であり世襲であるからであり、スターリンにしろ旧東欧諸国の国家元首にしろ世襲を実現しようとした旧共産圏の人物はいないとその理由を説明されました。
今の中国人は子供のころ共産主義で全て公平に分配しようと教えられ大人になるころ急に資本主義は良いことだと言われた人達であって、そういう教育を受けてきた人間がまともに育つはずがないと厳しい。中国人はまた自然環境を含めて何でも無制限にあると信じている。こういう国家は長続きしないはずである。唯、中国に関して一つ褒めて良いのは、北朝鮮と異なり自国民が国外に出ることを止めていないことで、外の情報が可成り入って来て自国を何とか変えなければいけないと思う人も増えてきている点、未だ希望が持てると付け加えてくれました。付け加えて中国で自由にどんどん原発を建設している現実を見て、氏は日本の原子力発電削減には理解を示しながらも、日本にとっては非常に危険なので日本の優秀な技術は保持して中国に提供することにより、より安全な方向に導くべきであるとの指摘は的を得たものと感じました。
瞬く間に終わった一時間半の講演でした。改めて紹介者の寺尾勝汎前幹事に感謝申し上げます。