行事報告

2012年04月20日 行事報告

関東地区4月度月例会

日 時 平成24年4月20日(金)
場 所 丸紅東京本社16階講堂
講 師 須磨 章氏
(NHKエンタープライズ シニアエグゼクティブプロデューサー)
演 題 世界遺産へようこそ!

 NHKは2003年11月にユネスコと覚書を交換して、同年12月1日より地上デジタル放送開始記念として「世界遺産からのメッセージ」と名付けて放送を開始しました。2012年で750本を放送する予定です。世界遺産でも自然災害、戦争、環境破壊等で傷つくこともあります。バーミヤンの大仏、タイのアユタヤ遺跡などに例があります。NHKはデジタルハイビジョンで世界遺産の放映を保存していくことを目標にしています。世界遺産は現在世界中に936箇所ありますから、もう少しですべてを撮り終わることとなるでしょう。因みに日本には14箇所あります。(今年登録された平泉や小笠原諸島を含めて)。


 「世界遺産条約」はユネスコによる国際条約で1972年に登録が始まりました。今年で「40周年」になります。始まったキッカケはフランス人少女の豚貯金箱です。エジプトのアスワン・ハイダムの建設によって巨大な遺跡が水没してしまうのを惜しんで移築しようと呼びかけたのです。ユネスコの呼びかけに世界各国が政治の枠を越えて協力しました。24時間体制での手仕事で見事に移築できました。この成功が世界遺産条約にと繋がっていったのです。このケースの素晴らしさは遺跡も守り、開発も実現したことです。文化が政治に勝ったと言えることです。


 世界遺産登録の基準は「人類にとって顕著で普遍的な価値」-Outstanding Universal Valueということですが、それは石の文化を念頭においた西欧文化の価値観でした。ビデオでご覧頂くセコビア旧市街と水道橋がその例です。ローマ時代の水道橋で接着剤を一切使っていない、現在でも使える素晴らしい建造物です。しかし,石だけが普遍的な価値があるものではないとの考えから「木の文明」にも光が当たりました。映像でご紹介するルーマニアのマラムレシュの木造教会群はその一例です。神聖なもみの木の教会は、結婚式や洗礼が今でも必ずここで行なわれています。お墓まで木でできています。ヨーロッパは他にも優れた木造建築があります。しかし、木の文明ときたら日本。「世界最古の木造建築・法隆寺」を提案しました。ここでAuthenticity(本物性、正統性)をめぐって大議論となりましたが(法隆寺は火災で再建されている)、「設計図がある」「同じ木材が使われている」との説明がとおり世界遺産に登録されました。日本が音頭をとって「石の文明ではない文明のAuthenticityを規定」を現実できました。


 石、木とくれば次は「土の文明」です。ご紹介するアフリカのマリ共和国のジエンネ旧市街が一例です。その他にも「砂漠のマンハッタン・イエーメンのシバーム等」世界の三分の一は土の文明です。
 理念も「普遍的な価値」から「多様な文明と歴史」に拡がってきているのではないでしょうか。現在批准国187カ国の中、世界遺産のない国は34箇国です。今後は途上国にスポットが当っていく感じです。ところで、国連の最大のスポンサーである大国アメリカは歴史が浅いのでこれまでの基準に当てはまるものは少ないのですが、素晴らしい自然遺産があります。そこでアメリカの主張も入れて「自然遺産」が加えられました。1978年に「イエローストーン国立公園」が最初に登録されました。


 このように世界遺産には「文化遺産」「自然遺産」そして「複合遺産」があります。文化遺産は形にない「無形文化遺産」もあります。NHKでは身近なキーワードでいくつかの世界遺産を紹介する「検索でGO!とっておきの世界遺産」を放映しています。映像で見ていただいた「ロイヤルウエディング」をキーワードにした一連の世界遺産が一例です。今後ともご期待ください。


(文責:寺尾 勝汎)


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