行事報告

2012年05月16日 行事報告

中部地区5月度月例会

日 時 2012年5月16日(水) 
場 所 名古屋支社9階会議室
講 師 荻野浩幸氏(名古屋市立西部医療センター陽子線治療科部長)
演 題 「新しいがん治療法-陽子線治療について」

 当日は会員32名のご参加をいただき、放射線治療専門医、日本放射線腫瘍学会代議員でもあります名古屋市立西部医療センター 陽子線治療科部長 荻野浩幸氏に標題に関し、専門的な立場より、現状と同センターの近況を交え、解説をして頂きました。


1. 今までの死因 - 現在主ながん死因としては 肺がん、前立腺がん、乳がん


がんで死亡する場合、50歳代よりだんだん多くなり、75歳以降ぐんと増える。一般てきに若年者ほどがんの進行速度が速いと言われているが、実際にはがんの進行速度と年齢に関係ない。


2. 苦しまないがん治療 - 名古屋市では「検討委員会」発足


名古屋市では5年前まではがんによる死亡が年間5,000人であったが、2009年にはその数9,000人になり、2020年には15,000人に至る恐れがあると。
上記状況より、今回名古屋市は体にやさしいがん治療の実現に向け、今年3月に「名古屋陽子線治療センター」を開院されました。
このセンターで名古屋市が取り組む意味として、
(1) だれもががんになる可能性ある
(2) 事業性、医療面、人材育成において役割を担う
(3) がん対策基本法の趣旨を踏まえる
この3点を考慮し、日本で7番目の陽子線治療センターを設置した。


3. がんの治療法


3-1. 外科療法
   手術によるもの – 例えば、乳がんのチェック。1cm以上の大きさでないと判らない。
   麻酔をかける必要あり、心臓・肺に負担がかかる。
3-2. 放射線療法
   放射線によるもの - 従来の治療法。しかし大きな腫瘍を取り除くことは、難しい。
3-3. 化学療法
   抗癌剤・ホルモン治療によるもの - 大きな腫瘍を消すことは難しく、副作用がある。
 現状、上記3つの方法を組み合わせることにより、効果的に治療が行われている。この中で、放射線療法の一つで新しい治療法として、陽子線治療が注目されている。


4. 陽子線治療とは


 体への負担が少なく、通院も可能なクオリティライフ(QOL:生活の質)に優れた治療です。陽子線はX線と異なり、ある深さで放射線量が最大になり、それ以上先に到達しない特性を持っている。この特性はブラックピークと呼ばれ、このブラックピークを腫瘍に合わせることで、腫瘍に放射線を強くあて、正常組織にあたる放射線を減らせるもので、X線で治療しづらいがんにも高い治療効果を期待できるものです。
注:水素原子より取り出して陽子線をつくる機能で、電気がなければ、放射線は作れないことより、例えば地震等で設備が動かなくなった場合、電気が停止になれば、陽子線は作れず、従い放射線は発生しないことより、昨年の福島原発のような放射線放出の心配はない。


特徴
(1) 痛みのない、からだにやさしい治療法
(2) 正常組織への影響を最小限に
(3) 身体の機能と形態を温存
(4) 社会生活との両立、治療後の復帰に支障をきたしにくい


4-1. 陽子線治療の適応疾患
   脳腫瘍、頭頚部腫瘍、非小細胞肺がん、肝細胞がん、前立腺がん、直腸がん術後再発、小児腫瘍
   適応外疾患 - 白血病、悪性リンパ腫など全身に広がったがん、胃がん
4-2. 治療の所要時間
   約20分、その内 2~3分陽子線照射
   がんの種類により、2~8週間で治療完了
4-3. 粒子線治療拠点
   全国で7箇所、これに名古屋が加わった。今後、北海道にも設置。
   重粒子センター:全国で5箇所
4-4. 費用
   288万3千円 (保険は適用されないー名古屋市民に対し、20万円減免)
4-5. 名古屋市陽子治療センターの状況
   東海三県初の粒子線治療「陽子線がん治療施設」
   通院治療がしやすい「都市型施設」-名古屋駅よりバスで約30分
   2013年3月 前立腺治療開始予定
   2013年7月 肝臓がん治療開始予定
   年間治療可能人数:現状800人、治療時間8:00~20:00
   必要に応じ、治療時間を延長することにより、治療可能人数を増やすことも検討している。


上記が当日の講演概要です。


 講演内容が非常に興味あるものであり、出席者は真剣に聞き入り、メモを取っている方も多く見られました。講演終了後、質疑応答に入り、会員より、設備の詳しい説明を求めたもの、更に延命に対する医師の考え方、生命の尊厳・摂理・哲学にまで深く突っ込んだ質問もあり、荻野氏も真摯に受け止め、それに対する考え方を通し、ご説明をしていただきました。


 最後に小林支社長より、丸紅の2011年度(2012年3月度)決算について下記ご報告をいただきました。丸紅の業績はSG-12に沿って、順調に推移しており、純利益は前期比26%増の1,721億円、今期は純利益2,000億円の過去最高を更新する見通しとのご説明があり、出席者一同頼もしい会社の将来に更なる期待を抱いた例会でした。


講師の荻野浩幸氏


講演風景


(文責:龍田 陽)


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