日 時 | 平成23年6月17日(金) |
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場 所 | 東京本社16階講堂 |
講 師 | 渡辺康幸氏 早稲田大学競争部駅伝監督 |
演 題 | 「自ら育つ力」-箱根駅伝優勝までの道のり- |
今年の箱根駅伝は史上初めて11時間をきる記録で優勝することが出来ました。昨シーズンの学生駅伝は全て勝ち、千葉国際を入れれば実質4冠を達成しました。これ以上何をすれば良いかですが、2連覇と東洋大の柏原を山上りで破ることを目標とします。秘策はあります。
私が7年前に監督を引き受けた時は、本当にないないづくしでした。学校からは優勝争いをするチーム作りを頼まれました。5つの条件を飲んでもらい、4年で達成できなければ辞める覚悟で臨みました。
その条件とは、
河野洋平氏に会長になって頂き資金集めや就職などの機動力がつき生き返りました。学生について云えば、弱いチームの通弊で自分が見えていない。夢と目標の区別がついていなかった。一人一人と話し合い、100点でシードが取れる力なので目標値をそこに設定しました。箱根でシード権が取れないと他の試合には出られない。箱根も予選から戦わねばならない。全く違う世界となります。
1~2年でそのレベルに達成する為に選手には、
(3.4.は他大学の選手でも良い)を要請した。そしてチームとして陽のオーラのある組織作りを目指した。成功して結果が出れば、必ずそうなります。就任時の競争部(陸上競技部)は陰のオーラしかなかった。今年早大競争部は、昭和16年以来の関東インカレの総合優勝を成し遂げました。陽のオーラに満ちています。就職活動にも良い影響が出ています。名選手は必ずしも名指導者になれない。
その点を自覚して私の指導方針は次のとおりです。
相良コーチのノウハウを生かしました。エントリーは12月29日に行ないます。今年はエースが故障し飛車角抜きで戦わねばならなかった。マスコミにも早大は危ないと書かれ、プレッシャーで29日は倒れてしまった。監督7年の総力を絞ってカケに出ました。本当は失敗する確率が高いのでやってはいけないのですが、他校が2区に使うだろうと思っていた大迫を1区で使い、他校の意表をつき何とか成功することができました。エントリーの発表をする時は先ず補欠の6人と話し合います。何故出られないかを納得するまで話し合い、心のケアをして来年へのモチベーションを高めてから全体の発表をします。
今年のチームは総合力があった。区間賞は1区のみ。これで新記録を出したのは史上初であります。総合力のないチームは勝てない。留学生頼みでは勝てない。駒沢と東洋は総合力がある。今年も強敵です。就職にも気を配っている。陸上で就職させるのは1~2割。他は普通の就職です。OB会のネットワークは頼りになります。
私も実績がついたので名将の入口位には入ったでしょうがまだまだです。名将は指導力の他に「運」や「縁」に恵まれています。小出義雄さん(私の高校時代のコーチです)は、とにかくほめ上手、欠点までほめます。そして、やらせる練習は超ハード。有森選手や高橋選手を引き当てたのも「運」と「縁」です。私が竹澤選手に出合えたのもそうです。
私が指導する時に留意していることは、
風邪やノロウイルスに気をつけるなど要点を短く。選手達は強くなりたい気持ちは非常に強いが自分ではわからない。昔語りをしないで預かった4年間でいかに希望を適えてやれるかです。日本の、特に男子のマラソンが弱くなってから久しい。駅伝、特に箱根駅伝があるからだという説もあり、当っている部分もありますが、だからと言って、日本で駅伝をやめる訳にはいかない。実業団も学校もそれに意義を見出している訳ですから。
マスコミもドル箱です。日本テレビから礼を言われました。伝統校が強いと視聴率も上がるそうです。将来的にはいろんな人々を巻き込んで日本男子マラソンを強くすることに貢献したい。日本人のメンタリティーはマラソンに向いています。それにはアメリカがやっているように十分金をかけて国家プロジェクトとしてやらないと世界に通用しません。箱根駅伝も100回目に向けて益々盛り上がるでしょう。来年88回大会は早稲田、駒沢、東洋の三つ巴になると予想されています。記録も上がるでしょう。これからは、
箱根2連覇は射程圏にあります。ご清聴ありがとうございました。
(文責・寺尾 勝汎)