日 時 | 平成23年7月5日(火) |
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場 所 | 丸紅(株)大阪支社2F講堂 |
講 師 | 平林克敏氏 登山家・住友ゴム工業(株)元専務取締役 |
演 題 | 『チベット聖地への旅』 ―ラマ教文化と自然― |
7月度の月例会は企業経営者且つ著名な登山家である平林克敏先生にお願いしました。
講師:平林克敏氏
平林先生は長野県大町市に生まれ、中・高時代より自然科学に興味を持ち、北アルプスに登り続けられました。大学ご卒業後、1956年関西電力入社、その後(株)日本ダンロップ(住友ゴム工業の全身)に転職、同社専務取締役、他国内外関連会社の役員を歴任されました。企業人としてご活躍される一方数々のヒマラヤ山脈の名峰を踏破、日本山岳会副会長を歴任されてきました。
講演風景
本日は西ネパールの最高峰アピ(7,132m)初登頂、サイパル峰(7,034m)初登頂、エベレスト(8,848m)日本人初登頂、更にチベット聖地に聳えるナムナニ峰(7,694m)初登頂に亙る長期の登山経験や、新疆からチベットに至る5,000キロの学術調査を下に秘境チベットの大自然のお話をして頂きました。題して''チベット聖地への旅''(ラマ教文化と自然)です。
チベット高原のロケーション:中央アジアにはパミール高原が位置し、その西が欧州文明圏、東が東アジア文明圏です。パミール高原の東には北から天山山脈、崑崙山脈、ヒマラヤ山脈と3つの山脈が走り世界の7,000m級の高峰は全てこれらの山脈にあります。そして崑崙山脈とヒマラヤ山脈に横たわるのがチベット高原です。
ナムナニ峰:
平林先生によれば1960年のアピ峰、3年後のサイパル峰の登頂で強烈な印象を受けた山がチベット高原のナムナニ峰。この登頂の許可取得に際して他国との熾烈な競争、中国トップとの直接交渉、また、100名程度の日中友好合同登山隊の編成(平林隊長)、中国側の全面的なバックアップの下、カシュガルを出発、途中崑崙山脈(4,000m)で身体を高所順応させるためトレーニングを積んだことなど、登山にまつわる様々な苦労話や逸話などを語って頂きました。
長らくの思いを秘めたナムナニ初登頂は25年目にしてやっと念願かなったとのことです。
チベット:
チベット霊峰の登山経験を下に次のような知的・教養あるお話
● チベットの自治区:チベットの歴史、ダライラマの由来、生誕にまつわる秘話など
● チベットの自然と特徴:世界屈指の動植物の豊かさ他
● 多様な文化と習慣:聖山巡礼(カイラス山)、五体投地の荒行、強固な精神性と深い信仰
● 死生観とチベット仏教(ラマ教):死は滅亡を意味せず、新しい生命の道に入るとの「死中生有」
● 天葬(鳥葬):ミイラから土葬まで
本当に美しいチベット山々、聖地の湖等のスライド写真を沢山披露頂きながら、面白く講演を頂き、まるで別世界にタイムスリップしたような一時間半でした。蒸し蒸しした暑さもすっかり忘れほとんど行く機会のない涼しい(極寒?)チベット高原の旅を楽しむことが出来ました。時間の関係で少し割愛となった一夫多妻と通い婚、エベレストより高い山、アムネマチン峰、「シャングリラ」不老長寿の理想郷などについてはまたの機会にお願いしたいと思います。
(文責/東田正夫)