行事報告

2010年05月13日 行事報告

関西地区5月月例会報告

日 時 平成22年5月13日(木)
場 所 丸紅㈱大阪支社2F講堂
講 師 所 功 氏 京都産業大学教授(法学部法学研究科)
演 題 「象徴天皇は何故お忙しいかー公務と祭祀の実情―」

講師の所 功 氏

 名古屋大学大学院文学研究科修士、慶応義塾大学法学博士。
平安時代の宮廷政治文化の史的研究、法制史の立場から皇室の伝統文化、皇位継承制度に関する研究に大きな業績を残され、近時の皇室問題の論議においてマスメディアでも活躍。


講演風景

 なにかと論議を呼ぶものの、いざ 皇室とは?と考えると、その制度や現状等意外と知られていないのではないか。折りしも昨年、今上天皇御在位20年が経過し、皇太子殿下も本年50才をお迎えになられた。この機会にと、皇室の歴史にご造詣の深い所 先生にご講演をお願いしました。社友会のような場は初めてとのことでしたが、皇室制度や天皇陛下の超ご多忙な日常等に併わせ、先生、ご令室がご出席された園遊会で思いもかけず天皇・皇后両陛下、皇太子殿下からお言葉を賜り驚懼感激された想い出話などを織り交ぜながら、分かり易くご説明いただきました。そう遠くはないと思われる皇位継承制度の在り方についての論議に際しての参考にもなり、有意義でかつ楽しい一時でした。


< 講演要旨 >


  • 「象徴」表現の由来:現憲法制定に際し、マッカーサー元帥は“日本皇帝は元首”とする考えであったが、GHQ民政局は、“元首”の表現を避け、“象徴”と修正のうえ、憲法草案を作成した。新渡戸稲造の英文著「日本」(1931)で紹介された“The Emperor is thus the representative of the nation and the symbol of its unity.”という記述を参考にしたものとも言われている。
  • 天皇の公務と祭祀: 天皇のお務めは①憲法に定める国事行為(国会召集、首相・大臣の親任、外国の大使・公使の接受など。*因みに昨年12月15日話題になった外国要人との会見は国事行為に該当せず。かつ非公務として公表されなかったが、賢所御神楽当日という支障があった。)②象徴としての行為(栄典授与、外国訪問、地方御幸啓、園遊会主宰など)③皇室としての私的行為(元旦の四方拝、新嘗祭など年間約30の祭祀、天皇としての修養・研究)があり、超ご多忙。
  • なお、祭祀は公務ではないとされているが、決して皇室のためのお祈りではなく、まさに国家・国民のためのお祈りであり、『公務』と言ってよいと考える。その公務を率先して遂行されてきた今上陛下も今や満76才。植樹祭のお言葉をなくするなど少し配慮されてきているが、なお過重負担を減らすための環境整備が必要である。
  • 皇室制度の問題点: 皇位は”世襲(憲法*以下は皇室典範)、直系・長子優先、皇統に属する男系男子限定、終身在位”とされ、さらに“天皇・皇族は養子不可”、“女性宮家の否定”の定めがある。大筋はしっかり作られているものの、“象徴世襲天皇”がきちんと継承できる内容になっているかと言えば、そうなっていない。2重3重の縛りが掛けられており、具体的応用は、極めて困難。早晩なんとか皇室典範を手直しせざるを得ないと考える。現状、皇太子の次が問題。幸いにして悠仁親王(3才)がおられるとは言え、30年後、50年後には、悠仁親王お一人ということになりかねないという心配がある。今、政治家も一般の我々も現状を踏まえて今後の皇室制度がどうあったらいいのかを周知を集めて慎重に検討し、象徴世襲天皇制度が永遠に続いて行くような努力をしなければならないと思う。 

(文責:岡田正信)


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