日 時 | 平成22年6月29日(火) |
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場 所 | 丸紅(株)大阪支社2F講堂 |
講 師 | 大西一男氏 神戸労災病院副院長 |
演 題 | 「高血圧と動脈硬化の知識」 |
神戸大学医学部卒業後、神戸労災病院内科医師として勤務開始。
平成6年4月、同病院の内科部長就任。循環器内科部長、アスベストブロックセンター長兼務。現在に至る。
梅雨真只中で雨が心配された6月の月例会でしたが当日29日は梅雨の晴れ間に恵まれました。出席された大半の方々が何らか の形でお付き合いしている高血圧・コレステロールの血管病への影 響、狭心症と心筋梗塞の違い、最近話題のメタボリックシンドロームについて、等関心の高いお話でした。
治療の第一歩は「生活習慣の改善により危険因子を減らすこと」だが、自分の事として捉えるだけでなく息子・孫にも教えていって欲しいと言われた先生のお言葉が印象的でした。
< 講演要旨 >
日本人の主な死因の25%は心筋梗塞などの心疾患と脳卒中などの脳血管障害で、狭心症や心筋梗塞は60~70歳代に多い。狭心症は心臓冠状動脈が動脈硬化などで狭くなり、必要な血液を心筋に送れなくなった状態で、心筋が一時的な酸素不足に陥るため、胸の圧迫感や焼け付くように感じるなどの症状を生じる。心筋梗塞は血流が完全に途絶え、心臓の筋肉が壊死するため、狭心症より強く、我慢できないほどの激しい胸痛が起こる。また、痛みのために冷や汗がでたり、嘔吐、便意をもよおすこともある。また、無症状のこともあり注意を要する。
高血圧は特別な症状が出ないことが多く、サイレント・キラーと呼ばれる。高血圧の状態を放っておくと心室壁が肥大し心機能が低下する。また動脈硬化を促進し心不全、腎臓病、脳血管障害などのリスクが高まる。
血圧には覚醒時に高値を示し睡眠時に低値を示す日内リズムや、精神的ストレスや感情変化によって変動する短期変動性がある。成人における正常血圧は収縮期圧130㎜Hg以下、かつ拡張期圧85㎜Hg以下である。
高血圧の発症には遺伝的素因と環境の要因が関与しているが、減塩や運動など生活習慣を修正する非薬物療法は、降圧効果が認められるだけでなく、降圧薬の作用を増強させる効果もあり有用である。適切な塩分摂取量は1日6~8gであるが現状は摂取過剰である。
現代は、高カロリー、高脂肪、運動不足の時代で、従来あまり問題とされなかった高脂血症や肥満が動脈硬化を発症させる原因となっている。なかでも高コレステロール血症が心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の主要な危険因子のひとつである。高カロリー、高脂肪、運動不足による病態は、個人差はあるものの、基本的には、耐糖能異常(糖尿病)、高脂血症、高血圧など、多くの危険因子が共存する病態で「メタボリックシンドローム」と呼ばれ、最近の話題となっている。
コレステロールは細胞膜やホルモンなどの成分となるからだには欠かせない物質だが、そのままでは血液に溶けないため、「リボ蛋白」と呼ばれる、脂質となじみやすい蛋白質と結合して血液中に存在する。「リボ蛋白」のうち比重の低いLDL(悪玉コレステロールとよばれている)はコレステロールに富んだリボ蛋白で、血管壁に侵入し、酸化作用をうけ動脈硬化進行の元凶となる。特にLDLコレステロールの低下療法により、動脈硬化の進展を抑制し、すでに発生してしまった動脈硬化を退縮(改善)させることができることが明らかとなり、虚血性心疾患の予防、総死亡率の低下を可能にしている。
(文責/楠田美樹)