行事報告

2017年10月27日 行事報告

2017年10月度関東地区社友会例会行事報告

日時 2017年10月27日(金)12時より
場所 丸紅東京本社(東京日本橋タワー)23階大会議室
講師 黒田勝弘氏(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)
演題 「韓国とどう付き合うか-離れられないが深入りするな」

 2017年10月度の関東地区月例会では、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏をお招きし、「韓国とどう付き合うか-離れられないが深入りするな」と題して、何かと摩擦の絶えない韓国との付き合い方について、ご講演をいただきました。黒田氏は在韓35年の経験を基に、飛び切りの韓国通として大活躍のジャーナリスト兼作家です。会場は、昨今の緊迫する朝鮮半島情勢を背景に、110名を超える社友が集まり、満員盛況の状態でした。


 黒田氏は、64年に京都大学を卒業され共同通信社に入社、80年から84年までは同社ソウル支局長を務められました。その後、産経新聞社より誘いを受け、88年、「無期限のソウル勤務」を条件に、同社に移籍、同社ソウル支局長兼論説委員を務められ、現在に至っています。


 講演の冒頭、「韓国の何がそれほど同氏の心を捉えたのか?」という点について、「韓国は面白い、刺激的でネタが多い、言い換えれば、いつまでも飽きないのだ」と、ジャーナリストの視点で説明されました。その要因として、北の存在が大きいことに加え、南にしても短期間で成長してきたことで、圧縮された変動の歴史が影響していると言います。それに遺伝子を含む歴史的、文化的な深い因縁がある。同氏は日韓の間がらについて、「異同感」という言葉で表現します。似ているけど違う、違っているけど似ている。これが面白いとのことです。韓国の自然は穏やかなのに、人間は激しい。一方で、お酒の飲み方ではアルコールに弱いという共通のDNAがあって、飲むとオープンマインドになって本音が出る。これは中国人にはないとのことです。


 日本と韓国の間の最初の大事件は、西暦663年の「白村江の戦い」です。これは、唐・新羅の連合軍に攻略された百済を支援するために、37千人の軍勢を日本が送り込んだ戦いですが、結果的に、日本はこの戦いに大敗しました。ところが、韓国内では、援軍を出したことへの正当な評価がなく、遺跡も記念碑もありません。今、朝鮮半島有事を想定する時、この歴史を忘れてはいけない。


 韓国は今、空前の日本旅行ブームで、昨年500万人だった訪日観光客は、今年は700万人に増えそうとのこと。これに対し、韓国を訪れる日本人は、その3分の1程度に留まる見通しです。これには北のミサイル危機のほか、日本における嫌韓意識の高まりが影響しているものと見られ、相手を知るという意味では、実に残念なことと黒田氏は嘆きます。また、韓国では、日本語習得熱が高まっていますが、これは、日本に行けば就職できるという期待の反映であり、現金な国民性の表れとも言えそうです。韓国では、反日愛国映画が大人気ですが、最近はネットを中心に、若者の考え方に少し変化が見られ、反日愛国主義はある意味で麻薬のようなもので、それに反発を覚え、物事を冷静かつ客観的に見ようとする動きも出始めているとのことです。我々日本人としては、この動きに大いに期待したいところです。


 北のミサイルが飛んで来る心配はないのかという点については、少なくとも、韓国ではそのような雰囲気は全くないとのこと。激しい言葉の応酬はあるが、戦争はないだろうというのが、歴史的な経験から来る、韓国人たちの直感のようです。北による暴発の可能性についても、朝鮮民族は生きることへの執着が強いので、少なくとも、彼らが先に攻めるとか自暴自棄で暴発することはないと見ていると。一方のトランプ大統領にしても、日韓の反対を押し切って単独で北を攻めることは、彼のビジネス感覚からは考えにくいと言います。現在の朝鮮半島の緊張状態の下、日米軍事同盟に基づき、「白村江の戦い」のように日本人の気概を示すべきとの意見もありますが、黒田氏は個人的には、先の終戦間際、広島の原爆投下で犠牲となった朝鮮王族の、李鍝(りぐう)殿下(当時、日本陸軍中佐)の遺体を、すでに制空権も失った状況で遺族の待つソウルに送り届け、8月15日の午後1時からソウルで陸軍葬を行ったことなど、これこそが「日本人の気概」と言うべきものではないかと強調されます。


 黒田氏は、天皇の訪韓はあるかという質問をよく受けるそうですが、安全性の問題から難しいのではないかと答えているそうです。北の存在もさることながら、不祥事が発生した場合に、韓国のメディアなど世論が、素直に遺憾の意を示すのか、逆に、「理解できる」というニュアンスになるのか、日本政府として確信が持てない段階では無理だと考えているようです。


 黒田氏は、日本は島国であることの重要性をもっと認識すべきであると言います。海峡を渡って攻めることには大きな困難があり、守る側にアドバンテージがあるということです。「白村江の戦い」や韓国併合などの歴史の結果をよく認識した上で、韓国は隣国であり、安保や経済、文化など、離れることはできない相手だが、深入りしては身動きできなくなるので、とにかく深入りしないよう、慎重に取り組む必要があると最後に強調されて、講演を締め括られました。我々日本人は、黒田氏の言われる「異同感」を頭の隅に置きながらお付き合いしていくことが大切と、改めて感じた次第です。




(関東地区幹事:市村 雅博)


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